米国ヒップホップ界の大物プロデューサーでありラッパーでもあるショーン・“ディディ”・コムズ(55)が売春強要などの容疑で懲役4年2月を言い渡された。かつて音楽・ファッション・メディア事業全般で億万長者の地位にまで上り詰めたコムズの没落に、現地メディアは「衝撃的な運命」と評した。 10月3日(現地時間)、ニューヨーク・タイムズ(NYT)やAP通信などによると、ニューヨーク南部連邦地裁のアールン・スブラマニアン(Arun Subramanian)判事はこの日の宣告公判で、コムズ被告に懲役50月と5年間の保護観察を命じた。 スブラマニアン判事は「女性を対象とした搾取と暴力に実質的な責任を問うというメッセージを加害者と被害者の双方に伝えるために相当な刑期が必要だ」と述べた。ただし「あなたが自力で成功を収めたアーティストであり事業家として、全世界の有色人種コミュニティを含む地域社会に革新とインスピレーションを与えてきた事実も考慮した」と付け加えた。 さらに判事は、コムズ被告の弁護団が主張した「ただのありふれた買春者にすぎない」という論理を退け、「あなたは単なる買春者ではなく、こうした行為を金で組織した」と強く指摘した。続いて、昨年の連邦捜査開始以降にも女性を暴行した事件に言及し、コムズの継続的な暴力性を非難した。 これに先立ちコムズ被告は、7月の陪審裁判で「売春を目的とした輸送」2件について有罪評決を受けた。ただし売春強要2件と犯罪組織活動(Racketeering)共謀容疑など残り3件については無罪となった。有罪とされたのは、いわゆる「フリーク・オフ(Freak Offs)」と呼ばれる「セックスパーティー」を開き、恋人と雇われた男性たちの性行為のために旅行日程を調整した行為に関連するものだった。 この犯罪は「マン法(the Mann Act)」違反にあたる。1910年に制定されたマン法は、売春やわいせつ行為など不道徳な目的で女性を州境を越えて移動させることを処罰対象としている。 コムズ被告は昨年9月に逮捕されて以来拘禁されており、服役中に模範的な行動を見せれば減刑の可能性があり、2028年中に出所するだろうと米メディアは予想した。 コムズ被告は12分間の最終陳述を通じて「おぞましく、恥ずべき、病的な行為だった」と述べ、裁判官に慈悲を訴えた。また「尊敬する裁判長に慈悲を懇願する。誰が何と言おうとも、私は心からすべてを後悔している」と語った。弁護団はコムズ被告を慈善家でありインスピレーションを与える指導者として描いた11分間のドキュメンタリー映像を提出し、コムズ被告は涙を見せてすすり泣いた。 「パフ・ダディ」「ディディ」という活動名でより広く知られるコムズ被告は、1990年代後半にバッドボーイ・レコードを立ち上げ、米国イーストコースト・ヒップホップを代表する人物となった。その後、衣料・酒類・メディアなど各分野に事業を拡大し、億万長者となった。しかし数年前から性的暴行および売春関連の民事訴訟に相次いで巻き込まれ、2016年には元恋人キャシーさんをホテルの廊下で暴行する映像が公開され、没落が始まった。 NYTは今回の判決について「かつて音楽界の頂点に立ち、自らの名声をファッションやメディア、ブランディングに活用した男に下された衝撃的な運命」と伝えた。