ベトナムから緑豆と偽ってコメを密輸しようとしたとして、大阪府警は6日、食品輸出入販売会社を経営するベトナム国籍の女性と日本人の夫を、植物防疫法（輸入の制限など）違反と関税法違反（無許可輸入未遂）の疑いで逮捕した。府警は国産米の価格が高騰する中で容疑者らが密輸を繰り返し、国内産と偽って販売した疑いもあるとみて流通の実態解明を進める。 逮捕されたのは、食品輸出入販売会社「フレッチ」を経営するチャン・ティ・トゥ・フェン（36）＝東大阪市＝と、夫で自営業の武重智之（47）＝同＝両容疑者。武重容疑者が輸入に必要な手続きを担当していたとみられる。 逮捕容疑はベトナム国内の協力者と共謀し、6月中旬から下旬にかけてコメ約45トンを緑豆と偽り、ベトナムから日本国内に密輸しようとしたなどとしている。府警は2人の認否を明らかにしていないが、逮捕前の任意の調べに「（輸入品の中に）コメが入っているとは知らなかった」と説明していたという。 府警生活環境課によると、海外からコメを輸入する際は植物防疫所に対し、輸出国側が発行した検査証明書などを届け出る必要がある。しかし容疑者らはこれらの手続きをせず、日本で必要な検査も受けていなかったとされる。 大阪税関には輸入品は大量の緑豆だと申告していた。緑豆は関税がかからないことから、府警は税金の支払いを免れるために虚偽の申告をしたとみている。 密輸されたのは、日本のコメと同じ短粒種「ジャポニカ米」とみられる。2200個以上の段ボールが二つのコンテナに積まれ、貨物船で大阪市内の大阪港に運ばれてきた。 6月25日に大阪税関による貨物検査で密輸が発覚。通報を受けた府警が関わった人物の特定を進めていた。 国内では2024年夏ごろからコメ不足が深刻になり、国内産の価格が高騰した。 府警が調べたところ、容疑者らの会社は25年に入って以降、20回以上にわたって大量の緑豆をベトナムから輸入したとする記録があった。 府警は実際に輸入されたのはコメだった疑いがあるとみている。価格高騰で国産米の需要が高まった時期と輸入のタイミングが重なっており、容疑者らが海外から密輸したコメを国内産と偽って販売していた可能性も視野に調べる。【井手千夏、露木陽介】