「世界各地の権威主義化に警鐘」 識者が読み解く平和賞の意図

2025年のノーベル平和賞に南米ベネズエラの野党指導者、マリア・コリナ・マチャド氏が選ばれた。受賞決定の背景や意義について、ジェトロ・アジア経済研究所の坂口安紀主任研究員(ベネズエラ地域研究)に聞いた。【聞き手・古川幸奈】 マチャド氏の受賞決定は、世界各地で進む権威主義化に警鐘を鳴らす意味合いがある。 独裁色を強めるマドゥロ政権に勇敢に立ち向かうマチャド氏へのノーベル平和賞授与は、民主主義や人権擁護の取り組みを後押ししようという非常に強いメッセージと言えるだろう。 21世紀に入り、世界各地で民主主義の後退や権威主義化が進んでいる。その最たる例がベネズエラだ。 国民から圧倒的な支持のあるマチャド氏は2024年7月の大統領選への立候補を阻止され、代わりに元外交官のゴンサレス氏を擁立して勝利を主張したが、マドゥロ氏がそのまま実効支配を続けている。 ゴンサレス氏は選挙後にスペインに亡命したが、マチャド氏は命の危険を顧みず国内に潜伏を続けている。 インターネットを活用して圧政に抵抗する国内外の政治家や市民に支持を訴え続けてきたほか、世界各国のメディアを通じて自分たちの民主化運動をアピールしてきた。非常に勇敢かつ、現代的な民主化運動を展開したといえる。 ベネズエラでは大統領選以降も、選挙活動の尊重を求める抗議運動が高まったがマドゥロ氏はこれを弾圧し、多くの逮捕者や死傷者を出した。今回の受賞決定は、国内で続く民主化運動にとっても大きな力になるだろう。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする