「約束は守らなければいけない」 謹慎中、長嶋さんにパーティーに呼ばれて壇上に招かれる 話の肖像画 ラグビー元日本代表・松尾雄治<23>

《プロ野球巨人軍の終身名誉監督だった長嶋茂雄さんとはゴルフをすることも多かった。ある日、神奈川県箱根町のゴルフ場に行くことになった》 長嶋さんは約束を絶対に破らない人でした。口約束であってもです。箱根でゴルフをするので、それぞれ車で向かいましたが、東名高速道路が事故渋滞でぜんぜん動かなかったのです。車載電話が鳴って「遅れたらいけない。厚木(神奈川県海老名市)から電車で行こう」と言われました。 厚木駅で待っていると、再び電話が鳴って「何をやっているの?」と聞くので、「いま厚木駅にいます」と答えたら、「厚木って言ったら本厚木駅のことだよ」と。厚木と言うから厚木駅に行ったのに…。 「約束をしたら守らなければいけない。約束の時間に遅れてはいけない。ゴルフだろうが何だろうが全力で守らなければいけない」。そう言うんです。大渋滞なのだから箱根にたどり着けない人ばかりだろうと思いましたが、「良いことを言うなあ」と感動しながら一緒に電車で向かいました。 ゴルフ場に着いたら案の定、ほとんど人がいません。「雄(ゆう)ちゃん、なんか今日は人が少ないね」と言うので、「東名高速が渋滞でしたよね」と。「そういうことか。じゃあ練習しよう」と言って、その日はずっと2人で練習をしました。そういう熱心さがあるのです。 「約束は守らなければいけない」「他人に迷惑をかけてはいけない」とか、ものすごく考えている人で、教えられることがたくさんありました。 《松尾さんは平成4年、ポーカーの賭博容疑で現行犯逮捕される。不起訴となったが、世間の批判にさらされた》 友人の自宅に8人が集まってトランプをしていました。警察官が入ってきて、「賭けているのですか?」と言うので、「賭けないでするやつがどこにいるのか」というふうになって。私が「誤認逮捕でしょ」と言うと、「いや、8人です」と。不起訴になりましたが、いろいろと勉強になりました。 《そのときも長嶋さんをはじめ、出会った多くの人の支えがあった》

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