「恨みはなかった」はずなのになぜ2人を…「埼玉・老人ホーム殺人」事件1ヵ月後も残る“謎”

「早朝6時ごろにパトカーのサイレンがすごかったので、外を見たんです。何台ものパトカーと救急車が止まっていて、ストレッチャーで誰かを運んでいるのが見えました。大変なことが起きたとは思いましたが、殺人事件と知って、本当に驚きました」(近隣の住民) 埼玉県鶴ヶ島市の有料老人ホーム『若葉ナーシングホーム』で、入居していた女性2人が殺害されてから1ヵ月が経った。事件発生当日に、同施設の元職員・木村斗哉(とうや)容疑者(22)が殺人の容疑で逮捕されたが、犯行の動機など多くの謎が残されたままだ。 事件が起きたのは10月15日の早朝5時ごろだった。 「入居していた2人の高齢女性が、頭から血を流している状態で見つかり、その後、死亡が確認されました。1人は4階のベッドの上、もう一人は5階のベッドの上であお向けの状態で発見されたのです。 施設の防犯カメラには、マスクをしてフードのようなものをかぶり、ナイフを持って歩く不審な人物が立ち去る姿が映っていたため、警察がその行方を追っていたところ、同日朝9時ごろに現場から約250m離れた路上で、木村容疑者の身柄を確保しました。そして午後には、5階に入居していた女性・Aさん(89)を刃物のようなもので切りつけるなどして殺害した疑いで逮捕したのです。 木村容疑者は『刃物で刺して殺したことは間違いありません』と容疑は認めたものの、動機については何も話していません」(全国紙社会部記者) 10月16日、埼玉県警西入間署には50人以上の報道陣が集まった。朝8時、木村容疑者を乗せた護送車が検察庁に身柄を送るために現れると、報道陣が取り囲んだが、木村容疑者は一瞬、報道陣に目をやると後はうつむき、目をつぶったまま、身じろぎもしなかった。 その後、Aさんの死因が首を締められたことによる窒息死だったと判明。また、木村容疑者は4階に入居していた女性・Bさん(89)についても、「首を締めてナイフで胸のあたりを刺した」と供述する一方で、「2人に恨みはなかった」とも話したという。 「木村容疑者は’23年5月から’24年7月まで、介護職としてこの施設に勤務していました。職員用出入り口の暗証番号が当時から変わっていなかったため、電子ロックの4桁の暗証番号を入力して施設内に侵入したとみられています。そして被害者2人は、木村容疑者が勤務していた当時から入居しており、面識があった可能性があるということです」(前出・社会部記者) ◆犯行当日も約20km離れた現場へ自転車で 木村容疑者は県内の中学校を卒業後、農業高校に進み、高校では陸上部に属していたという。中学校の同級生は、名前は覚えているものの、「特別な印象はなかった」と話す。また、その頃に住んでいたと思われるアパートには、すでに家族は誰も住んでいなかった。 事件当時、木村容疑者が住んでいた熊谷市内のアパートの住人は、「夏ごろにはガスが止められていたので、生活するのに困らないかなと思った」と話したが、「この事件が起きるまで、どんな人が住んでいるのかわからなかった」という。 しかし、住人の1人は木村容疑者の異様な様子を見たと取材に答えていた。 「同じアパートの住人が帰宅するたびにカーテンを開けては覗き、誰が来たのか確認しているようでした。カーテン越しにその姿が見えるのですが、全裸に見えたこともありました」 この1ヵ月で、新しい事実は出てきたのだろうか。前出の社会部記者が解説する。 「木村容疑者は、とにかくお金に困っていたようです。犯行当日は自宅から約20km離れた現場に自転車で向かっていました。『電車賃もなかったので、自転車を使った』と供述しているということです。 その後、埼玉県警は11月5日に、木村容疑者を窃盗と建造物侵入の容疑で再逮捕しました。10月12日~14日に、熊谷市内の飲食店に侵入し、レジ周辺の引き出しから現金約2万円を盗んだ疑いがもたれています。木村容疑者は『お金を盗んだことは間違いない』と容疑を認め、『生活費を得るためだった』などと話しているそうです」 現在、殺人と窃盗、建造物侵入の疑いで逮捕されている木村容疑者。今後はBさんを殺害した容疑や、責任能力の有無について捜査が進められていくとみられている。 木村容疑者の供述や解剖結果から、2人は首を絞められたうえに刃物で切りつけられており、県警は強固な殺意があったとみている。さらに事前に購入したナイフを所持していたほか、「殺害する目的で施設に入った」とも供述しており、計画的な犯行だったことは明らかだ。 なぜ、「恨みはなかった」はずの2人の女性を無惨にも殺害したのか。いまだに動機がわからないこの事件。全容解明にはまだまだ時間がかかりそうだ。 取材・文:中平良

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