東京・赤坂のライブハウス前で出演のために訪れた女性が刺された事件で、警視庁捜査1課は22日、陸上自衛隊朝霞駐屯地（東京都練馬区など）勤務の2等陸曹、大津陽一郎容疑者（43）＝東京都練馬区土支田4＝を殺人未遂容疑で逮捕した。警視庁によると、大津容疑者は以前に女性と交際していたと話す一方、容疑については「私はやっていません」と否認している。 調べに対し、大津容疑者は「女性と9年くらい前に交流サイト（SNS）で知り合った」と説明。「妻子がいることを隠して交際していたが、女性から別れを切り出されて6月ごろに円満に別れた」と供述している。そのうえで、事件当日は「赤坂には行っていない」と話しているという。警視庁は、2人の間にトラブルがあったとみて、押収した携帯電話の解析などを進める。 逮捕容疑は16日午前10時半ごろ、東京都港区赤坂3の雑居ビル地下1階にあるライブハウス前で、会社員の40代女性の左脇腹を刃物で刺して殺そうとしたとしている。逮捕前の任意の調べに対し、大津容疑者は「（女性との）トラブルはない。事件当日は仕事は休みだったが、朝から昼まで職場にいた。その後は帰宅した」とも話したという。 一方、捜査では大津容疑者とみられる男性が事件当日の早朝、自転車に乗って職場の駐屯地から約20キロ離れた赤坂に向かい、事件後に再び自転車で1時間半かけて駐屯地に戻る様子が防犯カメラ映像をたどる「リレー捜査」で確認された。また自宅の捜索で、この時に乗っていたとみられる自転車が見つかったという。 事件当日、ライブハウスでは午後1時からライブの予定があり、女性は出演者の一人だった。ライブハウスに来て入り口が開くのを待っていたところ、突然刺されて重傷を負った。傷は臓器に達していた。 現場付近の防犯カメラには、16日午前8時ごろに赤坂に着いた大津容疑者とみられる男性が、2時間以上周囲を物色し、ライブハウスの店先に張られたイベント告知のポスターに黒いスプレーで「×」を付ける姿が映っていた。事件後には、自転車で現場から逃走し、上着を黒から青色のものに替えて、正午ごろに駐屯地に戻ったとみられる。 女性はアマチュア歌手として活動し、10年ほど前から年1回の頻度で、このライブハウスのイベントに出ていた。警視庁は、大津容疑者が女性の出演予定を知ったうえで待ち伏せて襲ったとみて調べる。【菅健吾、朝比奈由佳、松本ゆう雅】