「餃子の王将」を展開する王将フードサービス元社長の大東隆行さん=当時(72)=を平成25年に射殺したとして、殺人罪などに問われ、26日の初公判で無罪を主張した特定危険指定暴力団工藤会系組幹部の田中幸雄被告(59)。罪状認否では「任俠(にんきょう)を志すものにとって1つや2つのぬれぎぬをかぶることはあるが、センセーショナルな事件まで(罪をかぶるのは)到底承服できない」とまくしたてた。 初公判は京都地裁で午後1時半ごろに開廷。被告は濃い紺色のスーツに白シャツ姿で出廷し、黒色の眼鏡とマスクも着用していた。不測の事態に備えてか、被告の周囲には透明の遮蔽板が設置された。 冒頭の罪状認否で、被告は「私は決して犯人ではありません。決してがつきます」と起訴内容を否認した。 被告側が無罪を主張すると、検察側の席に設けられた遮蔽板の中から、「何が無罪や」「一般人に手出していいんか」などと泣き叫ぶ声が響き、裁判長は「落ち着いてください」と声を掛けた後に、一時休廷とした。遮蔽板の中には大東さんの関係者が座っているとみられる。 被告は、事件発生から約9年後の令和4年10月に逮捕された。平成20年に大手ゼネコン従業員らが乗った車を銃撃したとして、令和元年に福岡地裁で懲役10年の実刑判決を受け、その後確定。判決では工藤会のヒットマンと認定されている。 元福岡県警幹部として長年、工藤会の捜査にあたった藪正孝さん(69)によると、被告は大東さん射殺事件の発生当時、工藤会傘下組織「石田組」の本部長。上層部からの信頼も厚かったという。 平成20年の事件で逮捕された際には、取り調べや公判で動機や背景などについては一切語らなかった。捜査関係者らによると、今回の事件でも被告は取り調べに対して黙秘を続けている。 工藤会や傘下組織は上層部から指示した実行犯について、犯行後の家族らの生活を保障するケースが多く、藪さんは「組織を裏切ると身内の命を狙われかねず、被告が法廷で事件について多くを話すとは考えにくい」と指摘。今回の公判で、被告から事件の背景や殺害依頼などの動機について語られる可能性は低いとみている。