証券口座乗っ取り、多数のグループがスキーム模倣か 被害拡大の背景

国内の証券大手で顧客口座が次々と乗っ取られる事案が続く中、警察は、乗っ取られた口座を株の「相場操縦」に使ったとして初めて容疑者の逮捕にこぎ着けた。ただ今回の容疑者が使ったとされる手口は「難しいものじゃない」(捜査関係者)といい、多数の犯罪グループが模倣を重ねることで、被害が拡大したとみられる。 「大規模犯罪組織によるものというより、いろんな集団が同じスキームを使ってバラバラにやったのだろう」。サイバー捜査の関係者は、一連の証券口座乗っ取り事件の背景をそう推察する。比較的簡単な手口が多数の犯罪グループ間で共有され、一気に広まった可能性があるという指摘だ。 情報セキュリティー大手「トレンドマイクロ」によると、乗っ取りの多くは、メールで誘導した偽のウェブサイトにIDやパスワードを入力させて盗む「フィッシング」による可能性が高い。今回の事件でも、口座を乗っ取られた10人の一部は、フィッシング被害に心当たりがあったという。 メールや偽サイトは近年、生成AI(人工知能)により、巧妙かつ簡単に作れるようになった。ある捜査関係者は「手法として難しくなく、海外でも既に起きていた犯罪。日本では比較的セキュリティーの甘い証券会社が狙われたということだろう」と話す。 今回逮捕された中国籍の男性2人は、不正アクセスして口座を乗っ取ったとされる。その後、勝手に名義人が所有する有価証券を売ったり、口座にひも付けられた銀行口座から入金したりして1億円超を用意し、株を買い付けるための資金にしたとみられる。 そのうえで、乗っ取った口座を使って株の売買を繰り返し、株価を不正につり上げていた。被害口座には、買い付けた後で値下がりした株が残され、今回は10口座で計1100万円の損失が生じたという。【菅野蘭】

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする