犯罪被害者支援を巡る重点課題や具体的な施策などを取りまとめた「犯罪被害者等基本計画」が、平成17年12月の策定から20年となった。5年ごとに見直しを続けてきたが、来年度から5カ年の第5次基本計画案では被害者側の心理的負担軽減のため、ワンストップ支援の拡充や「被害者手帳」の導入などが盛り込まれた。 陰に埋もれがちだった犯罪被害者支援の重要性が認識されるターニングポイントとなったのが、平成13年に大阪教育大付属池田小(大阪府池田市)で起きた校内児童殺傷事件だ。事件直後、大阪府警は1週間前に導入したばかりの「被害者支援班」制度を初めて運用。緊急招集した職員約60人を、被害者の関係先に派遣するなどした。 事件で長女の酒井麻希さん=当時(7)=を失った父、肇さん(63)は11月29日、「被害者支援の原点に戻って~私たちが望んだ支援、私たちが受けた支援」と題し、神戸市内で講演。事件直後の大阪府警による帰宅付き添いや、きょうだいの幼稚園送迎など、ニーズに応える早期支援が力になったことなどを紹介した。 自分たちが受けた支援が「特別な事件の特別な支援」で終わるのではなく、教訓が生かされ「普遍的な支援」となってほしいとし、被害者の状況や課題に応じて最適な支援に容易にたどり着ける仕組みの構築が必要だと指摘。 現在、犯罪被害者を支える枠組みは主に警察や弁護士会、支援団体などで構築されているが、その輪の中にメディアも入ることが重要だとし、犯罪被害者らを支援する認定NPO法人「大阪被害者支援アドボカシーセンター」(大阪市)と昨年作成した、犯罪被害者向けのメディア対応の手引きについて紹介。「報道被害の軽減と、報道されるメリットの増大につながる」と、活用の広がりとメディアによる被害者支援に期待感を示した。 ◇ 大阪教育大付属池田小事件 大阪教育大付属池田小の校舎に平成13年6月8日、当時37歳の宅間守元死刑囚が侵入し、教室にいた児童らを包丁で次々と襲った。2年の女児7人と1年の男児1人が犠牲になり、1、2年の児童13人と教員2人が重軽傷を負った。現行犯逮捕された元死刑囚は15年に殺人罪などで死刑判決を受け、16年9月に執行された。国と学校は安全管理の不備を認めて遺族に謝罪し、賠償。事件は各地の学校で安全対策を強化する契機となった。