『2025くまもと ニュースの深層』過去最悪被害の特殊詐欺 悪質な手口に迫る

8日からシリーズでお伝えする『2025くまもと ニュースの深層』です。 1回目の8日は『県内で起きた事件・事故』。二つの事件に焦点を絞って深掘りします。 一つ目は、県内で過去最悪の被害となっている特殊詐欺について間一髪で被害を免れた女性の証言から悪質で巧妙な手口に迫ります。 【火事】【渕上 洋平カメラマン】「ものすごい勢いで今、炎が上がりました」 【事故】【堂前 泉紀記者】「原形をとどめていません」 【警察の不祥事】【熊本県警 大島 誠吾首席監察官】「誠に申し訳ございませんでした」【汚職に捜査のメス】【堂前 泉紀記者】 「熊本県警の捜査員が小国町役場に家宅捜索に入ります」 【犯行の瞬間】『ポケカ』窃盗事件 【被害に遭った男性】 「自分は(被害者には)ならないと思っていたが…」 【前田 美沙希 記者】 「下益城郡美里町です。現金を回収しに来た〈受け子〉の男はいわゆる〈だまされたフリ作戦〉で現行犯逮捕されました」 防犯カメラには犯人確保の一部始終が捉えられていた。 4月、美里町で起きた詐欺未遂事件。犯人グループが高齢の男性に息子を装って嘘の電話をかけ現金をだまし取ろうとしたが、現場で待ち構えていた警察官が現金を受け取りに来た男を取り押さえた。 高齢の男性はこの前日、別の男に80万円を渡しだまし取られる被害に遭っていたという。 ことし熊本県内で相次いだ特殊詐欺事件。10月末時点で件数は179件、被害額は8億円に上っていて、過去10年間で最も深刻となっている。 【女性】 「自分の意識じゃなくて催眠術にかけられている感覚。判断力がない、その時って。もう100パーセントこのニセ刑事が本当だと、私を守ってくれていると…」 こう語るのは、熊本市に住む60代の女性。勤めていた会社を定年退職したばかりだった彼女に詐欺グループの魔の手が…。 事の発端は9月、携帯会社のオペレーターを名乗る人物からの1本の電話だった。 【オペレーター(吹き替え)】 「あなたの携帯からいたずらメールが送られているため携帯が使えなくなる。身に覚えがなければ被害届を出してもらう」 この話を信じた女性は、オペレーターに自分の個人情報を話してしまったという。 すると、次に長野県警の刑事を名乗る男が電話を代わり、女性にあることを告げた。 【長野県警の刑事を名乗る男(吹き替え)】 「詐欺事件の共犯者として、あなたに疑いがかけられている」 【女性】 「私の名義の通帳に詐欺グループの被害金1億何千万円が全部振り込まれている(と言われた)」 主犯格として逮捕したという男の顔写真や供述調書までも女性の携帯に送りつけてきた男。さらに女性を信じ込ませようと、巧妙なやり取りで畳みかけてきたという。 【女性】 「後ろから音声で女性検察官が『(Aさんに)逮捕状が出ているので即、身柄確保してください』って私とやり取りをしている刑事に女性検察官が言う。するとニセ刑事が『僕が(Aさんは)潔白だと思うので1日時間をください。警察手帳をかけて、クビをかけてもAさんを守ります』みたいな、私に聞こえるようにわざと偽物同士がやり取りしている。私はもう完全に〈刑事に守られてる〉って思い込まされる。〈アメとムチ〉じゃないけど、私をやさしく守ってくれる人と危機感を与えるような言葉を使う(人がいた)」 詐欺グループのまるで『マインドコントロール』のような手口により、刑事のことを信じきってしまった女性。『身柄拘束を先延ばしにする条件』として提示された、ビデオ通話やメッセージによる行動の監視に応じてしまったという。 【やりとりの画面見せる】 【女性】 「偽刑事は強く〈守りますからね〉夜中もずっとビデオで撮られているので、(Aさんが)泣いていたら優しく『大丈夫ですか』『僕がいますよ』と声掛けをずっと朝までされた」 常に監視され、外出や外部との連絡、インターネットの使用も禁じられた女性。監禁状態はなんと3日間にも及んだ。 【女性】 「完全に自分の部屋の中で監禁された状態。一歩も(家から)出ていないし、誰とも会話していない」 詐欺グループから『保釈金として350万円』を要求された女性は、言われるがまま消費者金融に借金をしてお金を工面したという。 【女性】 「自分の意識じゃなくて、催眠術にかけられている感覚」 しかし、詐欺グループによる監視にも隙が…。 【女性】 「だんだん犯人も、完全に私がだまされていると思ったのか、連絡しても返ってこなくなり(連絡の)時間が空いてきた」 女性は熊本県警に相談しようとタクシーに乗り込んだ。 【女性】 「運転手さんから『100パーセント詐欺ですよ』と言われたときに〈私、この人で救われたな〉と。家族がいる人は多分被害に遭いにくいと思う。家族にしゃべられるし相談できる。私の場合、一人暮らしだったので誰にも相談できないということも一つある」 現金をだまし取られずにすんだ女性。しかし、自宅の住所など個人情報を詐欺グループに伝えていたため、しばらくはおびえて過ごす日々が続いたという。 ことし熊本県内では、こうした警察官を語る手口が横行している。 【熊本県警生活安全企画課 釜賀 ルミ 次席】 「警察官というのは県民の不安を解消するための〈最後のとりで〉だと思う。その警察をかたったら、どこにも相談できない状況をつくってしまう。お金を払えば逮捕されないという制度はない。『逮捕』という恐怖から逃れるために言っている犯人の嘘だから絶対にだまされないようにしてください」 今回、取材に応じてくれた女性は、「私の体験談が詐欺被害の防止につながれば」と話している。

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