サウジアラビアの死刑執行が過去最多、昨年の345人を超える 人権団体が非難

サウジアラビアの死刑執行が2年連続で過去最多を更新した。同国の死刑の状況を追っている英団体によると、処刑されたのは今年これまでで少なくとも347人に上っており、昨年1年間の345人を超えたという。 サウジアラビアは、死刑執行を非公式に停止していたが、2022年後半にこれを終了させた。以来、薬物関連の犯罪での処刑が急増している。 英団体「リプリーヴ」(reprieve、猶予の意味)によると、死刑を執行された人の約3分の2にあたる96人は、他人の生命に危害を及ぼしていないハシーシュ(大麻樹脂)のみに関連する罪で有罪とされていた。国連はこうした状況について、「国際的な規範や基準と相いれない」としている。 96人のうち半数以上は外国人で、サウジアラビアの「麻薬との戦争」の中で、死刑に処された様子という。 直近の死刑執行も、麻薬関連の犯罪で有罪とされたパキスタン人の死刑囚2人に対するものだった。 今月16日には、エジプト出身の若い漁師イッサム・アル・シャズリー死刑囚の刑が執行された。サウジアラビアの領海で2021年に逮捕された同死刑囚は、麻薬の密輸を強要されたと主張していた。 このほか、今年処刑された人には、著作物がテロリズムと反逆の罪に当たるとされたジャーナリストや、子どものころに抗議行動に関連した犯罪を犯したとされた若者2人もいる。女性は5人となっている。 サウジアラビアの事実上の支配者であるムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、ここ数年で国を大きく変えている。石油生産に依存してきた経済を多様化させる取り組みの一環として、宗教警察を街から排除し、女性の運転を許可するなど、社会の規制を緩めると同時に、批判の封じ込めを図っている。 米拠点の人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は、サウジアラビアの人権状況について、依然として「劣悪」だとし、死刑執行の多さが大きな懸念要素だとしている。人権活動家らは、サウジアラビアよりも多くの死刑を執行しているのは、近年では中国とイランだけだとしている。 サウジアラビア当局は、死刑執行の増加について、BBCのコメント取材に応じていない。 リプリーヴの中東・北アフリカの死刑問題担当者は、「(サウジアラビアにとっては)誰を処刑しようが関係ないと思われる。抗議行動であれ、表現の自由であれ、麻薬であれ、国が問題だと考えていることに関して一切容赦しないとのメッセージを社会に送ることができればそれでいいようだ」としている。 リプリーヴによると、サウジアラビアでは死刑囚の家族は通常、刑の執行を事前に知らされない。遺体は引き渡されず、埋葬場所も教えられないという。 同国当局は処刑方法を明らかにしていない。だが、斬首か銃殺のどちらかとみられている。 サウジアラビアが今年1月、国連特別報告者による懸念への回答として出した文書では、同国は人権を「保護し支持している」と説明。「死刑は極めて重大な犯罪に対してのみ、極めて限定された状況において科される」、「あらゆるレベルの裁判所における司法手続きが完了するまで、死刑は言い渡されることも執行されることもない」とした。 (英語記事 Rights groups condemn new record number of executions in Saudi Arabia)

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