南米ベネズエラの反米マドゥロ政権に対し、トランプ米政権が圧力をかけ、両国の対立が深まっている。トランプ政権は「砲艦外交」によってマドゥロ政権の打倒を図る姿勢を明確にし、ベネズエラの豊富な石油資源などを確保する野心ものぞかせている。 ―最近の米国の動きは。 トランプ政権は国内で薬物乱用が社会問題となったのを受け、麻薬流入阻止を掲げる。米国で起訴されているマドゥロ大統領を麻薬組織「太陽のカルテル」のリーダーと見なし、8月にマドゥロ氏逮捕につながる情報提供への懸賞金を5000万ドル(約78億円)まで引き上げた。カリブ海に最新鋭原子力空母「ジェラルド・フォード」などを派遣。この海域では1962年の「キューバ危機」以来の大規模な戦力を展開し、密輸目的と判断した船舶への攻撃などを行った。 ―ベネズエラの対応は。 米国が麻薬対策を口実に、ベネズエラでの「体制転換と資源支配」を仕掛けていると反発。国軍に加えて民兵450万人を動員し、「どこの植民地にもならない」と国土を死守する構えだ。ノーベル平和賞を受賞した野党指導者マリア・マチャド氏が米国の介入を正当化しようと運動を展開していると批判した。昨年の大統領選で、マドゥロ氏はマチャド氏が支援する候補に勝利したと宣言したが、米欧は不正行為を理由にマドゥロ氏を正統な大統領と認めていない。 ―石油タンカーが拿捕(だほ)された。 石油埋蔵量が3000億バレル超と世界一のベネズエラは石油輸出が国家の収入源で、米国は制裁対象のタンカーがベネズエラの港に出入りするのを禁止して政権に流れる資金を断つ狙いだ。ベネズエラ産石油への依存度が高い敵対国キューバに打撃を与える狙いがあるという見方もある。長年にわたり親米国家だったベネズエラは99年に誕生した左派チャベス政権が国による資源管理を強化し、エクソンモービルなど米石油大手の資産を接収。マドゥロ政権が引き継いだ。トランプ氏は「われわれから盗んだ」と訴えている。 ―国際社会の対応は。 ベネズエラの要請で12月に国連安全保障理事会が開催され、同国と友好関係を持つ中国とロシアが米国を批判した。国連の専門家は米国による部分的な海上封鎖を「国際法違反」、密輸船攻撃も「生存権侵害」と判断。マドゥロ氏がリーダーとされるカルテルも「存在しないようだ」と指摘した。 ―今後の展開は。 トランプ氏はこれまで地上作戦を「間もなく開始する」などと本土攻撃を示唆して威嚇。一方、11月下旬にはマドゥロ氏と電話会談し、退陣を要求したとされる。マドゥロ氏の退陣に向けて追い込む構えとみられる。(サンパウロ時事)