「トランプが引き起こした『勢力圏秩序』回帰、弱小国をスケープゴートに」(1)

米国のドナルド・トランプ大統領の再登板からわずか1年で、世界は大混乱に陥っている。昨年の関税戦争に続き、今年初めにはベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領が逮捕・連行され、グリーンランド併合まで試みられたことで、世界秩序は1世紀前の帝国主義時代へと回帰する様相を呈している。特にロシアのウクライナ侵攻に続き、トランプが西半球を米国の勢力圏に編入するという意図を明確に示したことで、世界は大国が隣接地域で絶対的な影響力を行使する、いわゆる「勢力圏秩序」に再編されることすら懸念される。このことは、アジアにおいては中国による台湾併合の試みをあおる可能性があるため、韓国にとっても安心できない状況だ。ソウル大学政治外交学部のパク・チョンヒ教授は昨年、まるでこの現状を予見していたかのように、勢力圏秩序を歴史的に俯瞰(ふかん)した書籍『力と規則:国際秩序を見つめる2つの視点』を出版した。ハンギョレは先月29日、パク教授をソウル大学の研究室に訪ね、なぜ勢力圏秩序が危険なのかを聞いた。 パク教授は2007年に米国ワシントン大学(セントルイス)で博士号を取得し、シカゴ大学で政治学科の助教授として勤務。2012年からソウル大学で国際政治経済と社会科学の方法論を教えている。主な研究テーマは国際貿易、経済安全保障、ベイジアン社会科学方法論、選挙世論調査のメタ分析、国際ニュースを用いたビッグデータ分析。現在、ソウル大学社会科学研究院長、国家未来戦略院経済安保クラスター研究責任者、そして国際問題研究所国際政治データセンター長を務めている。 -『力と規則』という本を昨年出版されたが、何か特別なきっかけや動機があったのか。 「本を構想するようになったのは、米国で大統領選挙があった2024年の初めだった。バイデン大統領が世論調査で押され続けているのを見て、もしこのままの選挙結果が出れば国際秩序に大きな変化が訪れるだろうと思った。とりわけ2023年に出たトランプ候補の『プロジェクト2025』が大々的な政府政策の改造を宣言していたため、トランプの1期目とは比較にならないほどの変化があるように思えた。その変化は米国内のものにとどまらず、国際秩序の変化へとつながることが明らかであれば、その変化がどこへ向かうのかを考え、事前に準備する必要があると思い、本を書くことにした。最も懸念される変化の方向性は『勢力圏秩序』(Sphere of Influence)への回帰だと考えていたのだが、その懸念が次第に現実になってきているようで非常に心配だ」 -国際秩序を大きく「自由主義国際秩序」と「勢力圏秩序」の2つに分類した理由は? その根拠は? 「一般に2つの秩序は対等に併存してきたと考えられがちだが、実際には国際政治の歴史において基本的な枠組みは力の支配する勢力圏秩序だった。大国は自らの力の及ぶ範囲では階層的秩序を築き、外では排他的な影響力を行使する、というのが自然状態に近い。一方、自由主義国際秩序は18~19世紀の欧州の啓蒙主義思想をルーツとしており、20世紀に米国が主導して作り上げた人為的で例外的な啓蒙主義的計画だ。つまり、力の論理が支配していた野蛮な時代に風穴を開け、ルールを作ろうという巨大な実験が過去70年以上にわたって続けられてきたのだ。そのルールの要は、いかに平和を守るかだ。自由主義は2つの解決策を提示した。開放(自由貿易)と集団安全保障だ。これが戦後自由主義秩序の要となる原則だった。今、私たちはその実験が危機に直面し、再び厳しい自然状態である勢力圏秩序に戻ってしまうかどうかの岐路に立たされている」 -現在の国際情勢を大枠で診断すると? 「トランプ大統領の米国第一主義と西半球優先戦略は、かつてのモンロー主義を現代的に、そして非常に攻撃的に再解釈したものだ。19世紀のモンロー主義が西半球に対する欧州の干渉を排除するという防御的性格であったのに対し、第2次トランプ政権の戦略は、西半球内では過去の帝国主義的な確固たる覇権を行使し、その外の世界に対しては徹底して取引的な視点に立つという宣言だ。これは、米国がもはや世界の警察として公共財を提供することはなく、西半球の外では『域外バランサー(Offshore Balancer)』として残ることを意味する。域外バランサーとは、覇権国が武力で直接介入することはなく、沖(offshore)から主要地域の勢力バランスを管理するというもの。19世紀の英国の覇権戦略に由来し、これを現代米国の外交戦略として主張し続けてきた代表的な論者こそ、シカゴ大学のジョン・ミアシャイマー教授だ。中国やロシアのような大国が自らの前庭(勢力圏)を持つことを無条件に阻止するのではなく、彼らが米国に経済的利益を支払うか、米国の安全を脅かしたりしなければ、それを容認するという『力の分割』を示唆している。つまり、『西半球は米国の思い通りにするから、それ以外で勢力圏を作りたいなら米国の許可を得よ』という論理だ」(2に続く) パク・ヒョン|論説委員 (お問い合わせ [email protected] )

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