社説:生保の不正 信用揺るがす顧客軽視

保険会社の信用を根底から揺るがす大規模不正である。 外資系大手のプルデンシャル生命保険で、社員や元社員ら100人以上が関与し、顧客から計31億円を不正に受け取っていたことが明らかになった。 社内調査では、1991年から昨年まで30年超にわたり、営業社員らが顧客約500人から金銭をだまし取ったり、借りたりする不適切行為を繰り返していた。約23億円が弁済されていないという。 「社員にしか買えない株がある」といったもうけ話で詐取したり、保険と無関係な投資を契約させ、業者からキックバックを受けたりする事例があった。 法令やルールを逸脱した悪質さに、あぜんとする。 同社は9日から90日間、新規契約の販売自粛を始め、外部の専門家による第三者委員会を設置して再調査するとした。 問題発覚から1カ月で顧客からの補償申請は300件に上った。把握していなかった案件も含まれ、被害拡大の恐れがあるという。 組織的な関与があったのかどうかを含め、全容の解明と再発防止策の徹底、被害者への誠実な補償対応が求められる。 不正は、一昨年に元社員が顧客から投資名目で約7億5千万円を預かって詐欺容疑で逮捕されたのを受け、全社調査して判明した。 前社長の引責辞任で今月就任した得丸博充社長は、不正の原因の一つに、新規契約の獲得と強く連動する報酬制度を挙げた。「収入が不安定だったり、金銭目的の人材を引き寄せたりした」と弊害を認める。 好成績の社員には広い裁量権も持たせていた。顧客との関係で外部の目が入りにくく、不正のまん延につながったのは否めない。 長期間にわたる見逃しに加え、発覚後もガバナンス(企業統治)を欠いた対応が目立つ。記者会見での説明や第三者委の設置なども後手に回った。 収益に偏重したゆがんだビジネスモデルと、社内管理体制の抜本的な見直しが欠かせない。 金融庁は保険業法に基づき同社を立ち入り検査した。長年の不正をチェックできなかった責任は重く、監督の在り方が問われる。 保険業界では、営業情報の不正持ち出しなど、顧客を軽視した不祥事が続発している。各社でも事業全体を再点検し、契約者の将来にわたる安心を支えるという保険事業者の原点を見つめ直してほしい。

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