トケマッチ元代表が所持「バヌアツのパスポート」の実態…2000万円で市民権取得 中国人に人気

「トケマッチ」詐欺事件は、預けた高級時計を第三者に貸し出すことで、毎月預託料が得られるというシェアリングサービスをうたっていたが、実態は所有者に無断で売りさばき、現金およそ18億円を不正に得ていたとみられる。 運営会社の元代表・福原敬済容疑者は逮捕状が出る前にUAE(アラブ首長国連邦)のドバイに出国、国際手配された。身柄を拘束したUAE当局から引き渡しを受け、2025年12月に警視庁が詐欺容疑で逮捕。さらに2月9日、業務上横領の容疑で再逮捕した。いずれの認否も明らかにしていない。 およそ2年におよぶドバイでの逃亡生活。調べで明らかになったのは、福原容疑者がさらなる逃亡を企てるためか、バヌアツ共和国のパスポートを所持していたこと。偽造されたものではなかったようだ。 バヌアツといえば、南太平洋に位置する島国で、人口は約33万人。世界で最も火口に近づけるヤスール火山をはじめ、手つかずの自然がたくさんあり、100%オーガニックのバヌアツ牛など、食通が舌を巻くほどの絶品料理も多い。知る人ぞ知る南太平洋の秘境だ。 しかし、なぜ福原容疑者は、バヌアツ共和国のパスポートを持っていたのか。バヌアツの市民権申請をサポートする、ロイヤルパートナーズ行政書士事務所の特定行政書士、佐藤大河氏は「金額的に他の国よりもかなり安い水準なので、比較的取りやすいと言える」とコメントする。 佐藤氏によれば、日本人が国籍変更を希望する際は、一般的に「不動産の所持」「長期の居住歴」「語学能力の有無」「書類審査や面接」などクリアすべき点が多いが、バヌアツの場合は「寄付金」だという。 佐藤氏は「バヌアツDSP市民権といい、バヌアツ共和国の開発に貢献した人に、その市民権を付与するという制度がある。政府に対して寄付をするだけでいいので、不動産の購入義務などもない」と説明する。 バヌアツの市民権を申請するために必要な金額は、1人あたり13万米ドル(約2000万円)。市民権を得られると、パスポートも発行される。 「先進国であれば1億円近いお金を投資して、現地にも何年も住まなければいけないという国が一般的。他国より金額が安いだけで、必要書類や審査のプロセスが緩いわけではない。日本人が取る場合は最短でも5〜6カ月はかかる」(佐藤氏) バヌアツの主要産業は農業と観光業。ただ、サイクロンの被害も多く、財源が安定しないという実情が、寄付金での市民権取得の背景にあるという。 バヌアツに居住歴のある女性は、「バヌアツ政府が財源を確保するためにも、投資家による市民権取得が政府公認で行われている。2025年は2000人近くが市民権を取得していて、3000万米ドル以上、日本円にすると50億円近くの金額が、市民権販売の収入として確保できていると言われる」と語る。 では、なぜドバイに潜伏しながら、バヌアツのパスポートを得ていたのか。元千葉県警国際捜査官の石川公之氏は、国籍ロンダリングの可能性を指摘する。「バヌアツという安易に短期間で国籍が取れるところを狙って取得したということなので、明らかに海外逃亡を目的とした国籍変更だ。使い勝手のいい旅券をドバイの方で入手するということを念頭に逃亡したと考える」。 福原容疑者らに対しては、2024年に旅券返納命令が出ており、パスポートが失効となると、その情報は世界で共有されるため、出国することは事実上不可能となる。また、ドバイではバヌアツの市民権を得やすい、という事情もあるという。 佐藤氏は「バヌアツの市民権は、自分がダイレクトで政府に申請することはできない。バヌアツの法律で、政府のライセンスを受けた公式のエージェントを通して申請するようになっている」と明かす。バヌアツの移民登録事務所は、世界で5カ所あり、そのひとつがドバイにあるというのだ。 しかし、佐藤氏によると「2025年10月から、移民登録システム事務所というバヌアツの機関に訪問して、顔と指紋の登録をしないと取れない」そうだ。市民権の認定が下りる期間を考えると、福原容疑者はルールが厳しくなる前に、ドバイに居ながら国籍ロンダリングを企てた可能性が考えられるという。 さらに福原容疑者は、ドミニカ国の国籍取得方法を国際電話で確認しようとしていたこともわかっている。石川氏は「カリブ海の小さい島国は、同じように投資で市民権を取得できる国が集まっている。その中の1つがドミニカ共和国。そこで市民権をとれば、近隣の諸国にはノービザで出入りできる。ドミニカ共和国の旅券を最終的に取って、カリブ海諸国の島を渡り歩いて逃亡しようとしたのかもしれない」と推測する。 実は、バヌアツのパスポートをめぐっては、「バヌアツのパスポート、1カ月で取得」と書かれている中国のSNSがある。バヌアツのパスポート取得の代理業者が多数存在しているといい、中には大量のパスポートを持ってアピールする業者も。サイトを見てみると、「2〜3カ月、時短で取得」「値段が安い」「90カ国以上にビザ申請なしで入国可能」など、バヌアツパスポートのメリットが記載されている。 実際に「バヌアツのパスポートを獲得したいのですが、どうすればいいですか?」とメッセージを送ってみると、業者からは「資産は500万元(1.1億円)持っていますか?無犯罪証明書も発行できますか?」と返信があった。「500万元(1.1億円)の資産はないですが、難しいですか?」と聞き返すと、「少なくとも300万元(6600万円)の資産証明が必要です。それ以外に戸籍謄本、身元証明書、パスポートがあれば申請できます」と、必要書類や見積もりを細かく提示。さらに、バヌアツ以外におすすめのパスポートを紹介する業者まで存在する。 なぜ中国には、このような業者が多数存在するのか。石川氏は「日本に移住を希望する中国人に話を聞くと、中国当局の監視や規制が非常に厳しくなってきているため、それから逃れたいと正直に言っている中国人が多い」と話す。 自由度の高さに加えて、バヌアツは税金がほぼかからない「タックスヘイブン」のため、中国人投資家や富裕層からは絶大な人気を獲得。バヌアツ市民権取得者の多くが中国人であるとも言われている。 このニュースでバヌアツという国が取り沙汰された形になったが、在住経験のある日本人は、改めてこう語る。 「バヌアツは世界一幸せな国とも言われていて、刑務所自体も小さかったりするような、とても平和な国だ。私が住んでいた時は、中国人などの外国人、日本人以外も仲良くしていたが、ちゃんと生活に根付いていて、その人たちが悪さをしているという感覚ではない。パスポートを利用して海外に行って、悪さをしているのではないかという推測だ。(今回のニュースは)面白い話ではない」 (『ABEMA的ニュースショー』より)

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