湊かなえ『暁星』刊行記念「真っ暗闇でもたった一つ光る星があれば上を向いて生きていける」

湊かなえさんの最新作『暁星(あけぼし)』は、新興宗教を背景とした政治家の暗殺事件を入り口に、宗教二世の人生を描いた書き下ろし小説だ。特別な人の特別な話ではなく自分事として読んでほしいと、実際の事件とはまったく異なる物語世界を構築した。「書けてよかった」と語る湊さんの心の内と、作品への思いをうかがった。 ―物語は、政治家の刺殺事件から始まります。おそらく読者は、3年半前に起こった実際の銃撃事件を思い浮かべると思います。この事件を入り口に物語を書かれたのは、なぜでしょうか。 湊 実際の事件は、それ自体も衝撃だったのですが、もう一つ驚いたのが、関わっていた宗教団体が以前と変わらず影響力を持っていたということ。私が10代のころに大きく報道されていていつしか名前を聞かなくなっていましたが、それは活動が縮小したとか力を持たなくなったからではなく、ただ報道されなくなっただけで解決されてはいなかった。私は阪神淡路大震災の時、西宮市に住んでいたのですが、宗教の勧誘や活動を目にすることがありましたし、大学時代には他にも読書会という名目で人を集めている団体がありました。その時から何も変わっていなかったんです。自分も何かにすがりたいと思った時には、そちらに進んでいたかもしれない。これは他人事(ひとごと)ではないという思いで、記憶に新しい実際の事件を入り口にしました。 ―宗教をテーマにする難しさはありましたか。 湊 新興宗教について書くと、自分には関係ないとか騙(だま)される人が悪いととらえられがちですし、私の作品をずっと読んでくださっているミステリー好きの人に敬遠されるかもしれないと思いました。なので、物語としては実際の事件と切り離したものにすべく、教団や教義を一から考えました。私は小説家なので、言葉に向き合った作品にしようと言葉を教義の中心に据え、言葉を操る教団が出版社と癒着していたら世の中をコントロールできるのではないか、と考えていきました。

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