社説:東大の研究汚職 ずさんな管理、倫理正せ

教育と研究で日本をリードしてきた東京大の信頼を大きく失墜させる事態である。 収賄容疑で逮捕、起訴された東大大学院の医学系研究科教授が、共同研究の相手だった一般社団法人「日本化粧品協会」の代表理事から計180万円相当の接待を受けた疑いが持たれている。部下の元特任准教授も在宅起訴された。 東大病院では昨年12月、医療機器メーカーから賄賂を受け取ったとして、医師の准教授が起訴されたばかりである。 相次ぐ汚職事件は東大病院長の引責辞任に発展した。問われているのは、ガバナンス(組織統治)の機能不全にほかならない。 共同研究を巡り、教授は代表理事から提案を受け、皮膚疾患に関する「社会連携講座」の設置を大学側に申請するなど便宜を図ったとされる。 見返りに、自ら接待を何度も要求して高級クラブや性風俗店を利用していたといい、教育者としてあるまじき行為だ。 共同研究の解除後、協会が損害賠償請求して提訴し、東大は事件以外の問題も調査にあたった。 それによると、協会から予定された研究費約2億円のうち、支払われたのは100万円だったが、東大は入金状況の確認を怠っていた。設置申請の審議では、広告に利用されるのではとの懸念に対し、教授が「利用しないと誓約させる」と説明。だが、誓約書が出されないまま、設置が承認されていたという。 あまりにずさんな管理体制ではないか。 医学部や医学研究科は、多額の研究費と関係病院の人事を握る教授の権限が強く、研究室や医局での不正が見過ごされやすいとかねて指摘されてきた。 政府が国立大への運営交付金を絞る中、民間企業と共同研究を進める「産学連携」が調達手段として推進されてきたことも大きい。 東大は再発防止策として、講座の運営を厳しく確認するほか、来月から最高リスク責任者を設置する。一連の問題に関する外部の検証委員会も近く、問題点と改善策を打ち出すという。実効性の担保を求めたい。 東大が事件を受け、全教職員1万3千人に調査した結果、倫理規定違反が22件、うち高額接待を受けていた事例が3件あった。 組織風土や企業との関係が、癒着や研究のゆがみを招かない体制の確立が、東大はもちろん、すべての大学に問われよう。

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