国道8号の事故で逮捕された男は警察の調べに対し、「赤信号でも行けると思った」などと供述しています。 こうした悪質な運転をなくそうと、活動を続けてきた遺族がいます。 7年前、飲酒運転の事故で息子を亡くした県西部の夫婦です。 「被害者も加害者も生まない社会」を目指し、声を上げ続けてきた夫婦を取材しました。長谷川記者のリポートです。 今月7日、富山市の国道8号の交差点に普通乗用車が赤信号を無視して進入し、軽乗用車に衝突して親子2人が亡くなった事故。 この事故のニュースを厳しい表情で見つめる夫婦がいます。 心誠くんの母親 「(事故が)また起こってしまった。その気持ちでいっぱいです」 2人は2019年5月、富山から京都へ車で向かっている途中、滋賀県大津市でセンターラインをはみ出した車に衝突され、命を奪われた心誠くんの両親です。 相手の車は飲酒運転でした。 心誠くんの母親 「自分たちが被害者遺族となったその瞬間のことを思い出して、動かなくなった、冷たく動かなくなった大切な人を前に、その日の晩はどんな風に過ごされたんだろうなってそればっかり考えてます」 先月、富山市内の高校に2人の姿がありました。 およそ260人の生徒を前に行われたのは、「命の大切さを学ぶ教室」です。 心誠くんの母親 「みんなでその命を大切に大切に育ててきたのに。どうして、どうしてこんなことになったのか」 心誠くん「疲れてきた」 父親「え?上手くなりました」 3人兄弟の末っ子として家族みんなに愛されていた心誠くん。 事故は大型連休、京都に住む心誠くんの兄のもとへ家族で向かっている時に起きました。 心誠くんの母親 「5月5日、突然消えるようにいなくなってしまった。こんなに残酷なことはない。目の前の君たちの若い命がとてもまぶしい。どうか被害者にも加害者にもならないで」 愛するわが子を失った経験と、車の危険運転の恐ろしさを懸命に訴えた50分間でした。 講演を聞いた生徒 「ずっと(加害者を)恨み続けなくてはいけない原因なのが辛いなと感じて、絶対に加害者になりたくないなって思いました」 犯罪被害者や遺族が安心して暮らせる社会を作ろうと、県内全ての自治体での犯罪被害者等支援条例の制定を目指し、働きかけを続けてきた心誠くんの両親。 「被害者も加害者も生まないように」との思いで条例の制定と両輪で進めてきた講演活動は3年前から続いています。 心誠くんの母親 「18歳の子たちに向けて私が知っている限りの経験を伝えることができるっていうのは、本当に与えてもらったかけがえのない経験だと思いまして、こういう活動を始めていますね。それが誰かの命を守ることにつながるのなら、これほどうれしいことは無いと思って」 活動は法改正にも向けられています。 飲酒運転や信号無視などの悪質な運転を処罰する「危険運転致死傷罪」をめぐっては、その基準のあいまいさが指摘されてきました。 心誠くんの父親は、危険運転の法改正に向けた法務省の検討会にも出席しました。 遺族の意見もあり、一定の数値を超えるアルコールが検出された場合、全て危険運転とみなす、「数値基準」の導入がほぼ確実となっています。 しかし、飲酒運転そのものを一律に適用するまでには至らず、課題が残っているといいます。 心誠くんの父親 「悪質でないとか、危険性が無い、『そんな飲酒運転ってあるのかな』っていう風にやっぱり思うんですよね。一般市民の感覚というところとかけ離れた法律になってるんじゃないかなっていう風に強く思います」 心誠くんが亡くなった事故で、相手の車の運転手に下された判決は懲役4年。 運転手は今年1月、刑務所を出所しました。 それでも両親が危険運転撲滅への歩みを止めることはありません。 先週も、悪質な運転による事故で悲劇が再び繰り返されました。 心誠くんの母親 「今、自分の身に置き換えて考えるということをこういった悲しみの度に繰り返してほしい。辛いことだけれども、そうやって自分の身に置き換えて考えることが、『自分は無謀な運転をしない』と誓うきっかけになるのではないかなという風に思います」