AIを用いて犯罪を捜査し、抑止する「予測型警察活動」への取組みが進んでいる。しかし一方で、差別や偏見につながりかねない危険性など、注意すべき点も多い。「予測型警察活動」を正しくコントロールするためになすべきことは何か、筑波大学ビジネスサイエンス系の尾崎愛美准教授による論考。 ■予測型警察活動とは何か〜神奈川での先進的な取組み〜 近年、AIによるデータ分析を手がかりに、過去に起きた犯罪の解決や、将来発生し得る犯罪の予防を目指す警察活動が広がっている。こうした取組みは一般に「予測型警察活動」と呼ばれている(注1)。 日本における代表的な事例として知られているのが、神奈川県警の取組みである。神奈川県警では2018年からAIを活用して、(1)犯罪や交通事故の発生場所の予測、(2)犯罪が発生する要因の分析の支援を目的とした実証実験が行われた(注2)。 この実証を経て、2021年4月からは本格的な予測業務が開始されている(注3)。過去5年間の犯罪データに加え、気象情報や株価、地価、ガソリン価格といった各種ビッグデータを県警職員が毎朝入力する。 AIはそれらをもとに翌日の犯罪発生予測を算出し、その結果が県内すべての警察署に配信される仕組みだ。警察官はこの予測結果を参考に、犯罪が起こりやすいと見込まれる地域を重点的にパトロールすることができる。なお、こうした予測結果は警察関係者以外には公開されていない。 ■アメリカでは「差別につながる可能性がある」との批判も 一方アメリカでは、犯罪予測にとどまらず、過去に発生した犯罪への対応にもAIを活用する動きが積極的に進められてきた。その代表例が、音響センサー型の銃声検出システム「ショットスポッター(ShotSpotter)」である。 街灯や公共施設、集合住宅などに設置されたセンサーが異常音を検知すると、まず専門スタッフが音声データを確認し、それが実際に銃声であるかどうかを判断する。銃撃と判定された場合にのみアラートが送信され、発生から約60秒以内に場所が特定され、警察官が30〜45秒ほどで現場に到着できる仕組みとなっている。誤検知を抑えつつ迅速な初動対応が可能になるとして、ショットスポッターは注目を集めてきた。