作家・宮部みゆき 俳句をもとに紡いだ短編小説を文庫化 『新しい花が咲く ぼんぼん彩句』

◇「物語の制約から解放され、今の自分に素直な小説が書けるようになった」 1987年のデビュー以来、『火車』『理由』『模倣犯』などの社会派ミステリー、『本所深川ふしぎ草紙』「三島屋変調百物語シリーズ」などの時代小説を書き分けてきた宮部みゆきさんが、初めて俳句をテーマに短編小説を書いた『ぼんぼん彩句』。 タイトルも新たに『新しい花が咲く ぼんぼん彩句』として文庫化され、好評を博している。 来年には作家生活40周年を迎える宮部さんに、俳句+短編小説という試みと、今の心境についてうかがった。 ――もともと、同年代の編集者たちとはじめた趣味のカラオケ会「BBK(ボケ防止カラオケ)」が「ボケ防止句会」に発展し、そこで生まれた俳句をテーマに宮部さんが小説を書いたそうですね。 宮部みゆき 句会を始めた時は、小説にしようなんて考えていなかったんです。でも、句会の場で「この句、小説の題材にもらっていい?」と聞くと、皆「どうぞ、どうぞ」と。小説は俳句をタイトルにしたのですが、句の作者に「こんな物語になるとは」と驚いてもらいたい気持ちで書きました。 ――句を選ぶにあたってのポイントはありますか。 宮部 季語がまんべんなく入るようにとは考えていました。中には、句会の投票で特選になった句もあれば、1点も入らなかった句もあります。むしろ句の出来栄えよりも、わたしが小説にしたいと思う感覚を優先しました。だから、後から句を変更することもほとんどなくて。選んだ時点でその句に魅力を感じているし、ある程度物語が浮かんでいるので、小説を書く際にネタに困ることもないんです。 ――句をもとに物語を紡ぐことで、不自由さを感じることはないですか。 宮部 今のところはないですね。句を決めて、作者の方や句会のメンバーに「こんな物語にします」と伝えて、実際に書き始めたらまったく違う物語になったこともありますけど、それもおもしろい経験でした。また、句に導かれて今まで書こうと思わなかったテーマに出会うこともあって。この本の中に「異国より訪れし婿(むこ)墓洗う」という句がありますが、この句を選んで小説を書かなかったら、国際結婚について考えることもなかったと思います。自分の好きなテーマ、好きな物語を書いているだけでは経験できないことがたくさんある。お題を生かすという書き方をしたのは初めてなのでプレッシャーもありますが、すごく楽しいです。

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