性暴力は人間関係を破壊するもの。子どもの性被害をきっかけに崩壊していく被害者家族【監修者インタビュー】

※この記事はセンシティブな内容を含みます。ご了承の上、お読みください。 ある日突然、学校に行けなくなった小学3年生の勇。理由がわからず数ヶ月経った頃、おぞましい事件に巻き込まれていたことが判明し――。 漫画『性被害のせいで、息子が不登校になりました』(あらいぴろよ:著、斉藤章佳:監修、飛田桂:取材協力/KADOKAWA)は、息子の性被害を知った家族が、周りの支援を受けながら事件と向き合おうとする。けれども、自分を責める勇の具合はますます悪くなり、明るかった家族は崩壊に向かい……。 監修を務めたのは、精神保健福祉士/社会福祉士であり、西川口榎本クリニックの副院長を務める斉藤章佳氏。最近増加するSNSを通じた性犯罪の手口や、性加害者の認知の歪み、性被害を避けるためにできることなどをうかがった。 ――まず初めに、普段はどのようなお仕事をされているのか教えてください。 斉藤章佳さん(以下、斉藤):様々な依存症治療に横断的に関わっています。専門は加害者臨床で、これまでに3500人以上の性犯罪者の再犯防止プログラムに携わってきました。そのうちの300人以上は小児性犯罪歴のある対象者です。クリニックでは、若い世代を性犯罪の加害者にも被害者にもしないための包括的性教育プログラムの実践にも力を入れています。 ――本作は性被害をきっかけに学校に行けなくなってしまった男の子と、その家族のことを描いた漫画です。本作を読んでどのように感じましたか? 斉藤:女の子だけではなく、男の子も性被害にあうことを描いた希少性の高い漫画だと思います。それによって家庭も壊れていくのですが、性暴力は人間関係を破壊するので、漫画のように被害者側の家族の関係が少しずつ崩壊していくことは実際にもよくあります。 ――こんなことが本当に起こり得るだろうかと思うくらい衝撃的な内容でしたが、子どもの性被害をきっかけに崩壊に向かう家族が実際にもいらっしゃるのですね。 斉藤:はい。人生が180度変わってしまうような経験をされているご家族もたくさんいます。性被害の相談は誰にでもできるものではないので、家族の秘密としてずっと封印しているケースもあると思いますし、女の子が被害にあったケースだと、娘の被害を母親が父親には伝えていないというパターンも何度か見聞きしました。父親が知ったら加害者側に報復するのではとの懸念から伝えないケースもありました。 ――これまでの性被害のお話って、親が子どもから目を離したとか、親にも隙があったみたいに描かれるものが多かった印象ですが、本作では家族がしっかり子どもに向き合っている家族のもとで事件が起きてしまいました。 斉藤:親子の日々の関わりは大事ですが、24時間いっしょにいることはできません。どんなに気をつけていても子どもが性被害にあってしまった、というケースはあります。性被害を受けるのはけっして親や子どものせいではなく、被害を受ける可能性は誰にでもあるし、加害者になってしまう可能性もまた、誰にでもあり得ます。 ――性加害者には女性もいるそうですが、男女の比率を示すデータはあるのでしょうか。 斉藤:正確な調査をするのは難しいのですが、法務省が設置する法務総合研究所の調査によると、加害者の99.8パーセントは男性だそうです。被害者が男性の場合でも、その加害者の多くは男性です。ですから、性加害は男性の問題であると言っても過言ではないと私は考えています。性暴力に関するセミナーに来るのはほとんどが女性ですが、性加害を防ぐには、男性側の当事者意識の醸成が重要だと思います。 取材・文=吉田あき 斉藤章佳: 1979年生まれ。大学卒業後、国内最大規模といわれる依存症施設「榎本クリニック」にソーシャルワーカーとして勤務。現在、西川口榎本クリニックの副院長。25年にわたり、アルコール依存症、ギャンブル、薬物、摂食障害、性犯罪、児童虐待、DV、クレプトマニアなどさまざまなアディクション(依存症)問題に携わる。専門は加害者臨床で、3500人以上の性犯罪者の再犯防止プログラムに携わる。著書に『「小児性愛」という病-それは、愛ではない』(ブックマン社)、『子どもへの性加害-性的グルーミングとは何か』(幻冬舎新書)、『夫が痴漢で逮捕されました-性犯罪と「加害者家族」』(朝日新書)、最新刊に『10代のための「性と加害」を学ぶ本: 暴力の「入口」「根っこ」「しくみ」を知る包括的性教育マンガ』(時事通信出版局)などがある。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする