「45メートル突進し制圧された」…容疑者は修士号取得した「今月の講師」【現場】

「今日だけはダメだ(Not tonight)!」 25日(現地時間)の夕方、米ワシントンのヒルトンホテル。ドナルド・トランプ米大統領が在任中として初めて出席し、注目を集めていたホワイトハウス記者協会年次夕食会は、開始から間もなくして修羅場と化した。轟音が響くと、出席者たちはテーブルの下に身を隠し、極度の混乱の中で切迫した叫び声が上がった。 ■「トレイが落ちたと思った」…銃声なのか分からず始まった恐怖 事件が発生したのは、出席者たちが前菜を食べていた午後8時36分頃。会場のロビー側から数回、破裂音が聞こえてきた。現場でハンギョレの取材に応じた出席者の多くは、最初は状況を正しく認識できなかったという。ある出席者は「ウェイターがトレイを落としたり、テーブルが倒れるような音に聞こえた」と語った。実際、トランプ大統領本人も事件直後の会見で、「最初はかなり遠くでトレイが落ちる音がしたと思った」とし、「しかし、そばにいたメラニア(夫人)が『嫌な音だ』と言い、即座に銃撃だと直感した」と述べた。 轟音が響いた直後、数十人の米シークレットサービス(SS)の要員たちが会場に殺到した。彼らは銃を抜き、引き金に指を掛けたままテーブルを飛び越えてステージに向かって突進した。要員たちが「道を空けてくれ」と叫びながら突進すると、数百人の出席者は食器やナプキンを床に落としたまま、テーブルの下に身を隠した。会場内では携帯電話も通じず、状況把握がさらに困難だったという。 ステージ上のメインテーブルにいたトランプ大統領夫妻とJ・D・バンス副大統領は、要員たちの厳重な護衛を受けながら、ステージ裏へ迅速に避難した。現場にはマルコ・ルビオ国務長官、ピート・ヘグセス国防長官など、トランプ内閣の主要人物のほとんどが出席していた。米国で国家権力の序列上位にある人物たちが、一つの空間にこれほど密集することは極めて異例のことだ。 捜査当局によると、銃撃は会場の外周にあるセキュリティチェックのエリアで発生した。散弾銃と拳銃、多数のナイフで重武装した不審者が同エリアに向かって全速力で突進し、直ちにシークレットサービス(大統領警護局)の要員たちと銃撃戦が繰り広げられた。 トランプ大統領は事件発生後、ホワイトハウスで行った記者会見で、「容疑者は50ヤード(約45メートル)離れた場所から全速力で突進してきたが、宴会場にはたどり着けなかった」とし、「映像ではぼやけて見えるほど速く走ったが、非常に勇敢な警護要員たちによって迅速に制圧された」と称賛した。この過程で、シークレットサービス所属の要員1人が至近距離から胸部を撃たれたが、防弾チョッキのおかげで一命を取り留めた。容疑者は銃傷を負うことなく要員たちのタックルで転倒し、現場で手錠をかけられた。 ■ヘリ・爆発物処理班を入…容疑者はホテルの宿泊客 ホテル一帯は、事件発生から2時間余りが経過した昨夜11時頃も完全に封鎖された状態だった。ワシントン・メトロポリタン警察局はホテル周辺の数ブロックを封鎖し、警察の規制線(ポリスライン)を張った。上空ではヘリコプターが旋回し、特殊機動隊と爆発物処理班が投入された。会場内外の人々は外部へ避難し、ホテルの外にいた一般宿泊客もホテル内に入ることができなかった。 現場で逮捕された容疑者は、カリフォルニア州トーランス在住のコール・トーマス・アレン(31)であることが確認された。警察は、アレン容疑者が事件当日にこのホテルの宿泊客だったとし、犯行の動機や具体的な標的についてはまだ捜査中であると発表した。CBS放送は複数の情報筋の話として、逮捕された容疑者がトランプ政権関係者を銃で撃つつもりだったと供述したと報じた。アレン容疑者は2017年にカリフォルニア工科大学で機械工学の学士号を取得し、昨年カリフォルニア州立大学ドミンゲスヒルズ校でコンピュータ工学の修士号を取得した。求人・求職ソーシャルネットワーク「LinkedIn」に自分が掲載した経歴によると、最近、入試専門企業「C2エデュケーション」で非常勤講師として勤務し、2024年12月には「今月の講師」に選ばれたこともある。ゲームをリリースした経歴もある。米連邦選挙委員会(FEC)の記録によると、2024年10月に民主党のカマラ・ハリス大統領選陣営に25ドルを寄付した履歴がある。 トランプ大統領は午後9時45分頃、ホテルを出てホワイトハウスに戻った。大統領はホワイトハウスでの記者会見で、今回の事件を、自身が進めているホワイトハウス舞踏場の新設の必要性を強調する契機とした。トランプ大統領は「ホワイトハウスに計画中のイベント会場は、ドローン防御施設と防弾ガラスを備えた、はるかに安全な空間になるだろう」と強調した。夕食会については、「30日以内に改めて日程を調整し、必ず開催する」という意志を明らかにした。 今回の銃撃事件が発生したワシントン・ヒルトン・ホテルは、1981年にロナルド・レーガン元大統領への暗殺未遂事件が起きた歴史的な場所でもある。当時、ジョン・ヒンクリーがホテルを出ようとしていたレーガン元大統領に発砲し、重傷を負わせたが、手術の末に一命を取り留めた。 ワシントン/キム・ウォンチョル特派員 (お問い合わせ [email protected] )

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする