福井市で1986年に起きた女子中学生殺害事件(福井事件)で、昨夏に再審無罪が確定した前川彰司さん(60)が28日午後、計約8年8カ月にわたり不当に身体を拘束されたとして、約4千万円の刑事補償を国が支払うよう福井地裁に求める。 前川さんは事件から約1年後の87年3月29日、殺人容疑で福井県警に逮捕された。90年9月に一審・福井地裁で無罪判決を受けて釈放されたが、二審・名古屋高裁金沢支部は懲役7年の逆転有罪判決を下し、最高裁で確定。97年12月~2003年3月、刑に服した。 前川さんによると、金沢刑務所に入所後、精神に変調をきたして岡崎医療刑務所(愛知)に移った。極度のストレスや人間不信などの重圧があり、経済的損害と精神的損失は甚大だとして、法定上限の1日あたり1万2500円を請求するという。(荻原千明) ■「世の中に背を向けられ続けた」前川さん 前川彰司さんはパソコンを使えない。 裁判所に提出する刑事補償請求書は、リポート用紙9枚に手書きした。身体拘束の日数は、うるう年を調べてスマホの電卓で計算した。 インターネットが普及し始めた1990年代後半から服役した。心のバランスを崩し、出所後は精神科病院に入退院を繰り返した。 学ぶ機会を逃したまま、再審無罪が確定したときには還暦を迎えていた。 奪われたのは、留置場や刑務所に収容されていた時間だけではない。前川さんはそう感じている。 裁判をやり直す再審を求め、逮捕から雪冤(せつえん)までに38年。 一貫して無実を主張し続けていたのに、世の中にずっと背を向けられていると感じてきた。「それが何よりも、俺を苦しめた」