今月24日に放送したKNB報道スペシャル「暴走の終着点」では、県内外の交通事故を通して「過失運転」と「危険運転」をめぐる現状や課題について考えました。「過失運転」は不注意、「危険運転」は故意に人を死傷させる行為をした場合に適用される罪で、処罰の重さも大きく異なります。ただその適用基準があいまいだという声は多く、今の国会で法律の見直しが進められています。きょうのエブリィでは「速度をめぐる論点」について考えます。 今年3月、富山市八町の交差点で起きた事故。赤信号を無視して時速およそ140キロで突っ込んだ車が、右から来た軽乗用車に衝突。軽乗用車に乗っていた上田絵莉加さんと、中学2年の息子・壮芽さんが亡くなりました。車を運転していた舟橋村の杉林凌被告(26)は、警察の調べに対し「赤信号でも行ってやろうと思った」と話したということです。この供述などから警察は、杉林被告を危険運転致死の疑いで逮捕し、検察は起訴しました。 「危険運転致死傷罪」。 交通事故では最も重い罪にあたり、処罰は最大20年の拘禁刑。傷害致死罪と同じ、有期刑の上限です。 適用するためには、 ・アルコールまたは薬物の影響で正常な運転が困難な状態での走行 ・制御が困難な高速度での走行 今回の事故のように ・赤信号の意図的な無視 などの条件があります。 この「危険運転致死傷罪」は、過失でしか問えなかった悪質な運転を厳しく罰するため、2001年に創設されました。 法律の創設や改正の議論に携わった前田雅英名誉教授です。 東京都立大学 前田雅英名誉教授 「誤ってやった過失っていうと、うんと軽いんですね。ただ歴史の流れの中で、意図的にやったか過失かで天地ほど違うという感覚がだんだん埋まってきて、危険運転を処罰しようというのは、ある意味で流れからいくと当然だったんですが」 交通事故で人を死傷させた場合、加害者が問われるのは「過失運転致死傷罪」または「危険運転致死傷罪」です。「過失運転」が不注意によるとされる一方、「危険運転」は重大な危険や故意が認められるときに適用され、拘禁刑も最大7年と最大20年で大きく異なります。 しかし「危険運転」となるハードルは高く、その適用をめぐって司法の判断が揺らぐケースがあります。 2021年、大分市。当時19歳の少年が運転する乗用車が、猛スピードで交差点に進入。そのスピードは一般道の制限速度をはるかに超える時速194キロ。右に曲がろうとした対向車と衝突し、運転していた当時50歳の男性が死亡しました。 「危険運転」か「過失運転」か。検察の判断は揺らぎました。 当時、検察は一旦は「過失運転致死」で起訴したものの、「危険運転致死」に変更して起訴。一審の裁判ではその罪が認められました。 しかし今年1月の二審ーー。 判決は一転し「過失運転致死」に。福岡高裁は、時速194キロでも事故直前まで車線を逸脱せずに直進していて、危険運転致死の適用要件である「制御困難な事態が生じていたとは見いだせない」と判断。日常用語としての「危険な運転」と認めつつも、法律が定める厳格な要件を満たしているかどうかが重要としました。「過失運転」と「危険運転」をめぐる判断は最高裁に委ねられています。 東京都立大学 前田雅英教授 「危険運転って歴史、もうだいぶ経つって言っても新しいから、個人のばらつきが裁判官の中でも出ちゃうんだと思いますね。そこはね、本当はなるべく安定的な方がいいんだけど、裁判ってそういうものなんですよね。仕方ない」 危険運転を適用する基準や範囲を見直そうと、法務省は有識者による法制審議会や検討会を重ねてきました。非公開で行われた審議会。委員に議論の焦点を聞きました。 京都大学 安田拓人教授 「今回の議論というのは、その数値に達すれば一律にですね、もう誰がやっても危険運転状態になるんだというふうなラインを取ろうというふうな議論でやってまして、そこをどう決めるかが問題となったわけですけれども」 審議会では、自動車工学に基づき事故の回避が難しい速度を算出。一般道路で法定速度を50キロ超えた場合、高速道路では60キロ超えた場合に、数値基準を設けました。基準を超えるような高速度による事故は危険運転に問われる対象となります。 京都大学 安田拓人教授 「すごく高速度で走っていればそれ自体が危険なんだという方向の考え方ができるようになりまして、そのことは大きな進展だったのかなというふうに思っています」 改正法案は参議院を通過していて、今国会で成立する見通しです。 数値基準は速度だけではなく、飲酒運転の場合のアルコールの量にも設けられる予定です。来週のエブリィでは、その基準が高すぎて適用が難しいのではと訴える富山の遺族の声をお伝えします。そして今夜9時から、KNBラジオでは危険運転について特別番組を放送します。