「闇バイト」を使った特殊詐欺と広域強盗事件を引き起こし、日本列島を震撼させた「ルフィグループ」。後に大量の模倣犯を生み出し、「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」の源流にもなるなど、彼らが日本の犯罪史に残した爪痕はあまりにも大きい。 そんな稀代の犯罪組織の最高幹部らへの独占取材を基に、「ルフィグループ」の全貌に迫ったノンフィクション『檻の中のルフィ 闇バイトを生んだ者たち』(栗田シメイ著・講談社)が、6月24日に発売される。 「ルフィグループ」による犯行は、なぜ8件もの広域強盗へと発展したのか。この謎を解くカギは、今村(磨人・以下、被告表記は省略)が「ネタ元」から仕入れた情報の精度の高さにある。 ’22年10月に起きた「稲城事件」以降、「足立事件」と「千葉事件」を除く5つの強盗先の情報を得たのは今村だった。今村が「ネタ元」から仕入れた情報は、自宅の金庫の保管場所やその総額、貴金属の有無、家族構成から職業、セキュリティの有無に在宅時間まで、異常な精度を有していた。一介の不良集団にはできない所業だろう。これまでの裁判でつまびらかにされた情報を精査すると、そんな印象を抱く。 今村は広域強盗事件を起こす前、幹部である藤田(聖也)や渡邉(優樹)、実行役と以下のような情報を共有していた。(注:被害者の心情や秘匿事件になっているものが複数あることに配慮し、どの事件の情報か明言することは避けた) 《野球賭博の現金を分配しており、当宅はその現金を保管している。月に1度、現金が集まる。その日を狙う。総額5000万円〜6000万円、多い時は1億円。集まる時間は午前11時〜13時のあいだ。仲間内からリーク。犯行当日、おそらく一人でいるのでそのタイミングを狙う》(幹部たちの間で共有されていた情報。以下同) 「野球賭博の胴元だからガンガンいこうぜ」(実行役へのテレグラムでの指示。以下同) 《悪い市議会議員がいて、そこの長男がリーク。老夫婦二人。時々孫が来る。金庫に3600万円。貴金属多数。2〜3人在宅可能性あり。地下にカネがあるからとってくれ》 「脅して金庫番号を吐かせて、中身だけ抜いてこい」 《元ヤクザか現役ヤクザの土建屋社長が、大量にカネを溜め込んでいる。1億円から1億5000万円、息子からのリークという情報あり。事務所にはセコムあり。自宅にはなし》 「抵抗するなら多少手荒なことしても吐かせろ」「相手は堅気じゃないので容赦なくやっちゃってください」 詳細は省いたが、内容は概ねこのようなものだった。強盗先の情報をかなり細かく入手しているのがわかる。藤田や小島(智信)の裁判でも、「(被害者に)近しいところから情報を得ているため(今村の情報は)確証が強い」という趣旨の証言が残っている。 稲城事件の計画が本格的に稼働し始めたのは、発生のおよそ1週間前。’22年10月12日からである。まずは指示役である今村と藤田、そこに渡邉を加えたメンバーで、被害者の資産状況と家族構成、実行日時、在宅の有無、狙う時間帯、道具の種類、実行役の人数などについて話し合われた。 このやり取りを経て、今村は自らが用意した実行役へ指示を出す。渡邉グループでは、小島がSNSで集めた実行役に藤田が情報を降ろした。 ただし、実行役に奪うカネの額や住所など細かい情報を知らせるのは、いずれも犯行直前だった。他の犯罪組織への情報の横流しや、捜査機関への密告を防ぐことが目的であり、強盗が行われた3ヵ月の間、これは徹底されていた。事案によっては、運転手役にしか詳細な情報が共有されないこともあった。 稲城事件の実行役は5人。そこに運転手役が1人、盗品の売却役2人をくわえた計8人でチームを組んでいる。 事件前、指示役と実行役との間ではこんなメッセージが交わされていた。 「住宅街だから正面からGO! イージーですね」