殺人事件、逮捕されても「4人に3人」は不起訴だが…世論の誤解を生みだすメディア報道の“物語化”

テレビを見ていると、見知らぬ人による無差別殺人ばかりが取り上げられているように感じませんか? ひとたび発生すると連日報道される通り魔的犯行。しかし、実際の殺人事件の多くは、被害者にとって「顔見知り」である人物によって引き起こされています。 警察庁の犯罪統計によれば、日本における殺人事件の約85%は、家族や元交際相手、職場の関係者や知人など、被害者と面識のある人物によるものです。つまり、私たちが最も恐れる「見知らぬ人による突然の殺人」は、実際には全体の15%程度に過ぎないのです(【図表】参照)。 さらにいえば、この面識ある人物による殺人の約半数は家族内で発生しています。配偶者間、親子間、兄弟間と最も身近な存在による殺人が、実は最も一般的な形態なのです。 では、なぜメディアは「通り魔」的事件を大きく報じるのでしょうか。それは単純に、こうした事件が「予測不可能な恐怖」という強い感情を呼び起こし、視聴率や販売部数に直結するからです。誰にでも起こりうる恐怖として描かれる無差別殺人は、視聴者の関心を引きやすい素材なのです。 しかし、こうした報道の偏りが、私たちの安全への感覚を歪めています。本当に警戒すべきは見知らぬ人ではなく、身近な人間関係のなかにあるかもしれない危険信号なのです。多くの家族間殺人事件には、事前にDVや虐待などの前兆が見られます。そうした兆候を社会が見逃さない仕組みこそ、殺人を防ぐための重要な鍵となるでしょう。(野田 隼人(弁護士、龍谷大学法学部非常勤講師)) ※本記事は野田隼人・堀田周吾 著「事件・裁判報道の『深層』を読む技術」(現代人文社)より一部抜粋・構成しています。

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