「移民を減らせ」の声が急減、トランプ強硬策に広がる逆風

アメリカへの移民を減らすべきだと考えるアメリカ人は減っている。その割合は、ドナルド・トランプ大統領の再選キャンペーンが最高潮にあった24年に直近のピークを付けたが、そこから2桁ポイント低下した。 世論調査会社ギャラップが7月9日に発表した新たな調査結果は、25年に始まった低下傾向が続いていることを示す。背景には、移民当局の職員とアメリカ市民や移民との衝突が相次ぎ、大きく報じられてきたことがある。なかには死者が出たケースもあり、アメリカ人のルーベン・レイ・マルティネス、レネー・ニコル・グッド、アレックス・プレッティの3人も死亡している。 トランプは、合法的な在留資格を持たない人々の大量送還を公約に掲げてホワイトハウスに戻った。メキシコとの南西部国境で不法入国が急増したことが背景にある。この流れはトランプの1期目末期に始まったが、ジョー・バイデン前大統領の下で本格的に増加し、より強硬な移民政策への幅広い支持につながった。 「ギャラップ調査には有用で長期的な基準線がある。近年の変動は、不法移民の急増と取り締まりの強化、とくに街頭での目立つ逮捕の増加と連動している。つまりこの調査は、移民の数だけでなく移民管理に対する人々の意識を映す代理指標でもある」と、移民制度改革団体ナンバーズUSAの共同代表ジェレミー・ベックは本誌に語った。 「トランプ大統領と議会は、職場での取り締まりを重視することで、この振り子の揺れを止められる。具体的には、就労資格確認制度『Eベリファイ』を導入し、不法就労の市場を干上がらせることだ。この政策提言は長年、超党派の支持を得てきた」 移民をどう見るか ギャラップが6月1〜15日に実施した調査では、アメリカ人の73%が、移民は国にとって「良いこと」だと答えた。25年の過去最高79%からはやや低下したものの、長期平均の67%、24年の66%を大きく上回っている。移民はアメリカにとって悪いことだと答えた人は21%にとどまった。 ギャラップによると、より強硬な移民政策への支持低下は、共和党支持者自身の間で強まっている。移民を国にとってプラスと見る共和党支持者の割合は、異例に高かった24年の水準から低下したが、それでも50%に達する。ギャラップの長期データは、共和党支持者が24年に比べ、移民数を減らすべきだと考える割合を大きく下げていることも示している。 調査では、アメリカ人は移民を減らすより、現在の水準を維持するか増やすことを支持する傾向がなお強いことも分かった。35%は移民を現在の水準に保つべきだと答え、31%は増やすべきだとし、減らすべきだと答えた人は29%だった。 24年からの大きな反転 今回の結果は、24年大統領選の最中に記録された意識とは大きく対照的だ。当時は南部国境での移民遭遇件数が過去最高水準に達し、国境警備に政治的関心が集中したことで、移民問題は有権者の最大級の関心事となっていた。 「移民への不満の高まりを主に引き起こしたのは国境の混乱であって、移民や移住そのものへの反対ではなかった」と、リバタリアン系シンクタンクのケイトー研究所で移民研究を担当するデービッド・ビアーは本誌に語った。 「24年、民主党指導部は、規制強化を支持すれば無党派層の懸念を和らげられると考えた。その結果、規制強化を支持する民主党有権者が歴史的に急増した」 「不満を生んでいた唯一の要因、つまり新たな不法移民の流入は、いまや消えている。トランプ政権は合法移民を大幅に削減し、大量送還は国内各地に混乱を引き起こしている。それもまた不人気だ」 25年に発表されたギャラップ調査では、アメリカ人の55%が移民の削減を望んでいた。この数字は、移民と国境政策をめぐる懸念が数年にわたって高まった末に到達した水準だった。同時に、国境の壁の拡張や国境警備隊員の増員といった強硬策への支持もピークに近かった。 とくに共和党支持者は、より厳しい移民管理で強く一致していた。25年7月に発表されたギャラップの分析によれば、共和党支持者の間で移民削減を支持する割合は24年の選挙サイクル中に88%に達したが、トランプがホワイトハウスに戻った後に急落した。 24年末の複数の世論調査でも、トランプが提案した大量送還計画には過半数の支持があった。とくに、不法移民全般の退去について尋ねた場合に支持は高かった。ただし、長期居住者や家族、犯罪歴のない移民が対象となるシナリオを示されると、支持は下がることが多かった。 当時の多くの調査は、アメリカ人が取り締まり強化を支持する一方で、市民権取得への道筋や、より広範な合法移民制度改革も支持していることを示していた。移民問題をめぐる世論の複雑さが浮き彫りになっていた。 なぜ意識は変わったのか ギャラップの調査結果は、トランプの復帰後に国境での不法越境が急減したことで、24年の選挙戦中に多くの有権者が移民問題に感じていた切迫感が薄れた可能性を示している。25年のギャラップ分析でも、国境での遭遇件数が減り、移民問題が以前ほど大きく報じられなくなると、移民への懸念はかなり和らいだことが分かっていた。 新しい調査は、アメリカ人が移民の大きな経済的恩恵をなお認識していることも示している。過半数の回答者は、合法移民が労働力不足を補い、低賃金の仕事の担い手を供給し、税収を生み、科学技術分野の労働力に貢献していると答えた。 住宅価格の負担の重さや雇用競争への懸念は残るが、ギャラップによれば、国民はおおむね移民の経済的影響を、マイナスよりプラスに捉えている。 今回の調査は、注目度の高い移民取り締まり作戦、収容施設の拡大、政権による各種移民制限をめぐる法廷闘争が数カ月続いた後に発表された。 1月以降、少なくとも3人が連邦移民当局者に殺害された。ミネアポリスではアメリカ市民のレネー・ニコル・グッドとアレックス・プレッティが死亡したほか、7月7日朝には、ヒューストンに長年住んでいたメキシコ国籍のロレンソ・サルガド・アラウホが、アメリカ移民・税関捜査局(ICE)の職員に撃たれて死亡した。 批判派は、こうした行動によって、一部の有権者が強硬な取り締まりに不安を覚えるようになったと主張している。国境警備の強化を支持し続けている場合でも同じだ。 「トランプ大統領は、連邦移民法を執行し、不法滞在者を送還するという公約を掲げて選挙を戦い、当選した」と、ホワイトハウスのアビゲイル・ジャクソン報道官は本誌に語った。 「メディアと民主党がICEの活動や政権の移民取り締まり方針について嘘を広めているにもかかわらず、トランプ政権全体がその公約を果たすために動いている。メディアは真実を伝え始めるべきだ」 トランプの次の一手は ギャラップの数字が示すのは、24年にはアメリカ人が国境での対応を求めていたとしても、いまはそれを移民全体の長期的な削減に結び付けることを必ずしも望んでいない、という点だ。この違いは、アメリカが26年中間選挙に向かうなかで、ますます重要になり得る。 「有権者は国境でも国内でも混乱を望んでいないし、移民は国にとって有益だとおおむね考えている。だからトランプ政権は行き過ぎていると見ている」とビアーは言う。 「合法移民への一般的な制限に対する支持はほとんどなく、大量送還よりも合法化への道筋のほうがはるかに人気がある」

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