千葉県柏市の「柏たなか病院」で、点滴チューブに排泄物を混入された入院患者が死亡した事件。千葉県警は7月15日、同病院で看護師として勤務していた古川美由紀容疑者(51)を殺人容疑で逮捕した。 「古川容疑者は夜勤を担当していた今年1月30日の午前3時55分ごろ、入院していた会田栄次さん(75)の点滴の延長チューブに大便を混入させた疑いが持たれています。午前3時ごろまでは看護記録などにも異常を示す記載はなかったそうですが、午前4時すぎに准看護師が顔面蒼白になった会田さんを発見。会田さんは『苦しい』と訴えていたそうで、翌日に敗血症による多臓器不全で死亡しました。鑑定の結果、体内からは排泄物に含まれる細菌が発見されています」(全国紙社会部記者) 事件を受けて病院は16日に緊急会見を開き、長谷川奉延院長が「尊い命を守りきれず、無念な思いでこの世を旅立たれたことに、心より深くお詫び申し上げ、ご冥福をお祈りいたします」と謝罪。事件の概要などを説明した。 いっぽう古川容疑者は同日に千葉地検に送検されたが、容疑を否認しているという。だが事件をめぐっては、いくつもの“不自然な点”も指摘されている。 病院の会見によれば事件当時、1月29日の夜勤当番だった古川容疑者は准看護師と2人で32病床を半分ずつ担当。しかし、古川容疑者は会田さんの担当ではなかったにもかかわらず、会田さんの病室を複数回出入りしていたという。准看護師はその様子を目撃しており、古川容疑者から「被害者の病状が心配だから、病室に立ち寄った」と説明を受けたとされている。 准看護師は午前4時すぎに会田さんの異変に気付くと、救急外来スタッフや病院全体を管理する看護師長を呼んだとのこと。その際、点滴袋と会田さんの体をつなぐ「点滴ルート」の薬剤を入れる側管から、体に続くチューブの部分が茶色に変色していたという。 「事態が発覚する直前の午前3時55分ごろ、古川容疑者が会田さんの病室に入り、1分ほどで退室する様子が防犯カメラに映っていたといいます。また、古川容疑者は事件前にスマホで『便注入 死ぬか』と検索していたほか、事件前に病院内の排泄物を保管・処理する部屋に出入りする様子が防犯カメラに映っていたことも判明。警察は古川容疑者が大便を持ち出し、会田さんの点滴に混入させたと見て捜査を進めています」(前出・全国紙社会部記者) さらに、看護師長が会田さんの点滴ルートを交換した際、足元に置いていたはずの茶色く変色したチューブが入った滅菌カップがなくなるという出来事も。看護師長の確認に古川容疑者は「スタッフステーションに移動させた」と答えたものの、スタッフステーションに置かれていた滅菌カップには、変色したものと異なるチューブが入っていたという。 「過去の事例で筋弛緩剤や空気、消毒液を点滴に混入させたという事件はありましたが、排泄物の混入は今まで聞いたことがありません。あまりに異常といえるでしょう」 驚いた様子でこう語るのは、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏。今回の事件について、元刑事の観点から解説してもらった(以下、カッコ内はすべて小川氏)。 「容疑者がスマホで『便注入 死ぬか』と検索した時点で、殺意があったかどうかはわかりません。ただ、看護師なので点滴に排泄物が混入すれば、どうなるかということはある程度理解していたでしょう。その上で、死に至るのかどうかを知りたかったということが窺えます。そうしたことを検索するということは非常に犯人性が高いといえますが、容疑者がどのような検索結果を目にして行動に移したのかという点も重要になってくると思います」 とはいえ、古川容疑者の一連の行動から「犯行準備の計画性は極めて高い」といい、滅菌カップをスタッフステーションに移動させたことについても「証拠隠滅を図った可能性がある」と指摘した。 いっぽう長谷川院長は会見で、「容疑者と被害者のトラブルの有無については、現時点で確認しておりません」と説明していた。しかし、一部報道では古川容疑者が仕事に対して不満を漏らしていたことや、事件前に古川容疑者と会田さんの間で口論などのトラブルがあったことも報じられている。 小川氏は今後の捜査のポイントについて、こう分析する。 「まず、動機を解明するためにも、容疑者と被害者の間に起きていたトラブルの詳細を明らかにする必要があるでしょう。さらにそのトラブルを病院側が把握していたのかどうか、もし把握していた場合はどのように対応したのか。事件当時、容疑者は被害者の担当ではなかったので、被害者の担当を受け持った経歴があるかどうかなどの点も踏まえて、今後は捜査が進められるものと思います」 もとは助産師だった古川容疑者は、看護師として経験を積むため、1年ほど前に産婦人科クリニックから同病院に転職してきたという。しかし事件性が疑われたことから、出勤停止に。その約3週間後、古川容疑者は病院に事件の進捗を問い合わせ、警察が捜査を進めていることを知ると、「そうですか、私もう戻れないですね」と呟いていたという。 彼女を犯行に駆り立てた動機はなんだったのか、事件の全容解明が待たれる――。