京野菜「九条ねぎ」は消費者から人気で、調理の手間が省けるカット商品の需要も伸びている。京都ブランドの浸透で他産地と比べ高単価で取引されることから、これまでも産地偽装や窃盗の事件が繰り返されている。近年は気候変動による猛暑の影響でネギの安定的な供給が難しさを増しており、不正対策の強化を求める声が上がっている。 九条ねぎのカット商品に中国産ネギを混ぜて販売したとして、京都府警生活保安課と南署は6月、不正競争防止法違反と食品表示法違反の疑いで、京都市南区の青果卸売業元社長の男(55)=同区=を逮捕した。府警によると、同社は数年前から、中国産や他府県産のネギを加工し「京都九条ねぎ」と表示されたパックに詰め、府内外のスーパーやラーメン店に出荷していた疑いがあるという。 九条ねぎは、柔らかく甘みがあるのが特徴の青ネギ。旺盛な需要から府内のネギの作付面積は2024年は337ヘクタールで、20年前から約1・3倍に拡大した。京野菜の代表格として定着し「他府県の青ネギより高値で取引される」(市場関係者)という。 特にカット向けの出荷割合が増えており、業界内の競争は激化している。京都市内の加工卸業者は「どこかの卸業者が少しでも卸値を上げると、スーパーなどの営業社員が安く仕入れようと連絡を入れてくる」という。取引先から信頼を得るため「欠品を出さないよう、多くの量を安定的に調達できるルートを確保することが重要」と語る。 さらに近年は猛暑が流通に影を落とし、通年での安定供給は難しさを増す。九条ねぎは厳しい暑さとなる夏場は育ちにくく、近年は8月下旬から秋にかけて不作が慢性化している。 24年に府内の畑から九条ねぎを盗んだとして逮捕、起訴された農家の男性は、夏の生育不良を受け、納品量の確保のため犯行に及んでいた。今回逮捕された男も「猛暑で府内産の仕入れが困難になった」と動機を説明する。一方、容疑者の会社は昨年、仕入れたネギの約6割が中国を含む他産地が占めており、捜査関係者は「偽装が常態化していた可能性が高い」とみている。 九条ねぎのカット商品に中国産を混ぜ込む手法は、これまでも確認されている。別の卸業者は「カットの場合、消費者が見分けるのは困難」と指摘する。府は毎年、府内産の野菜や精肉を対象に産地偽装がないか抜き打ち調査をしているが「予算の問題もあり、全ての食品に目を光らせるのは難しい」という。 府南部で九条ねぎを育てる農家の男性は「産地偽装は京野菜全体への風評被害となりかねない。卸業者や小売業者は取引量や栽培履歴をデジタル化し、相互に確認できるようにするなど、流通の透明性を高めてほしい」と訴える。