飲酒運転や大幅な速度超過など悪質な運転に適用される法律が21日から変わります。 今年、富山市の国道8号で2人が死亡した事故など危険運転で逮捕・起訴されるケースがありましたが、これまで危険運転の要件が「あいまい」だとし、遺族などから見直しを求める声があがっていました。 そこで、21日に施行された改正法では危険運転を適用する速度や飲酒量の「数値基準」が盛り込まれています。 県内で起きた事故の例をもとに改正法について見ていきます。 今年3月、富山市で軽自動車に乗っていた中学生とその母親の2人が猛スピードで交差点に侵入してきた車と衝突して死亡しました。逮捕された男は「赤信号でも行ってやろうと思った」などと話し、交差点に時速140キロで侵入したとみられています。 また、去年12月に高岡市の交差点で制限速度の2倍にあたる時速80キロを超えるスピードで進入し、柱に衝突したとして男が逮捕されました。男は同乗の女性を救護せず立ち去り、女性は死亡しました。 この2つの事故。「危険運転致死」で逮捕・起訴されました。 事故で人にけがをさせたり、死亡させたりした場合、捜査機関は「過失運転」か「危険運転」かを調べます。 過失運転は言い換えれば「ミスや不注意」によるもの、これに対し危険運転は「故意」による事故です。 危険運転致死傷罪の最高刑は拘禁刑20年で、危険運転致死傷罪の7年より重くなります。 しかし、悪質性が高いと思われる事故でも「過失運転」と判断されるケースは少なくありません。 先月、魚津市の北陸道で発生した事故。酒を飲み、大型トラックを運転した男が作業車両に衝突し、作業員の男性2人が死亡しました。 逮捕されたトラック運転手の座席付近から見つかったのは酒の空き缶4本。男は調べに対し、飲酒を認める一方、「酔っていなかった」と話し、罪の軽い「過失運転致死罪」で逮捕・起訴されました。 飲酒運転は「ミスや不注意」なのか…。 遺族はこうコメントしています。 「運転の態様、飲酒の量、常習性などを踏まえ、危険運転での起訴にできないのか」 飲酒して高速道路で2人が死亡する事故を起こしても危険運転で起訴できないんですね。と思ってしまいます。 その背景にあるのは、法律のあいまいさです。 これまでの法律で危険運転致死傷罪の要件となっているのこちらです。 飲酒運転については「アルコールの影響で正常な運転が困難な状態」、スピードは「走行を制御するのが困難な高速度」が要件でした。 確かに、抽象的に感じますね。 警察や検察は、「危険運転」を立証するため、証拠を集めるわけですが、特に飲酒運転に関しては、そもそもお酒に強い、弱いというのは個人差がありますし、その日の体調によっても変わります。 ドライブレコーダーや防犯カメラから容疑者の運転の様子が分かれば有力な証拠となりますが、映像では、車がどれだけ危ない動きだったか分かりづらいこともあります。 捜査関係者からは「アルコールが事故に与えた影響を正確に判断するのは難しい」、「飲酒での危険運転適用は特にハードルが高い」との声がありました。 21日からの改正法では、基準が明確になったんですよね。 数値基準が設けられました。 飲酒運転は、呼気1リットルあたりアルコール濃度が0.5ミリグラム以上。 目安ですが、ビールの大瓶2本程度を飲んだら量にあたります。 スピードは、制限速度が時速60キロ以下の一般道路などで「50キロ以上」、高速道路などで「60キロ以上」のオーバーが危険運転の対象となります。 基準をいずれか満たせば、原則、一律で、「危険運転」が適用されます。 こうした基準は全国の遺族からの声を受け、設けられましたが、複雑な思いを抱える遺族もいます。 *飲酒運転事故で母親を亡くした 中田康介さん 「ジャッジが難しいとされる(法律の)内容だったので、ジレンマだったり不公平さを遺族として感じていた。(法改正は)前向きに感じている」 中田康介さん。おととし、富山市で起きた事故で母親を亡くしました。 当時42歳の男が酒を飲んで車を運転し、フロントガラスに雪が積もり、前が見えないまま走行。一方通行と赤信号を無視して、中田さんの母親をはねたとされています。 警察は男を過失運転致死と酒気帯び運転の疑いで書類送検しました。 これを受け、中田さんたちは全国から約6万3000人の署名を集め、危険運転致死罪で起訴するよう富山地方検察庁に求めました。 しかし、検察の判断は「過失運転致死」。理由について富山地検は「危険運転致死罪と認められる証拠がなかった」などとしました。 同じように苦しむ遺族が減ってほしいと願う中田さん。数値基準が示された法改正を評価する一方、数値のハードルが高いと受け止めています。 *中田康介さん 「なかなかハードルが高い数値だなと思っている。母親のケースで言うと、新しい基準を満たしていないので、どういう評価になるのか。基準に満たないとき、補足としてしっかりと精査してほしい」 飲酒の場合はアルコール濃度0.5ミリグラム以上、ビールの大瓶2本にあたると説明がありましたが、こうした基準の根拠は何でしょうか。 アルコール濃度0.5ミリグラムの根拠として法務省は、医学的に「どんな人であっても、運転操作が困難になる」数値としています。 当然、人それぞれですが、体重60キロの人が飲酒し30分後に呼気を測ったとき、ビール大びん2本の場合は呼気1リットルにつき、0.39から0.68ミリグラム。日本酒2合の場合、0.33から0.57ミリグラムとなるとされています。 ただ、改正法では、基準値を満たさなくてもそれぞれの事故の状況から、「正常な運転が困難」と認められれば、危険運転致死傷罪が適用されるとしています。 基準を満たしていなくても危険性や悪質性が明らかな場合は危険運転となるんですね。 捜査機関にはしゃくし定規な運用ではなく、今後もそれぞれの事故に合わせた丁寧な捜査が求められます。