巨大スクリーンに自身が大写し、大統領就任式典の「隠れた英雄」 米仏と肩並べ感慨深く 国際舞台駆けた外交官 岡村善文氏(48)

公に目にする記者会見の裏で、ときに一歩も譲れぬ駆け引きが繰り広げられる外交の世界。その舞台裏が語られる機会は少ない。戦後最年少(50歳)で大使に就任し、欧州・アフリカ大陸に知己が多い岡村善文・元経済協力開発機構(OECD)代表部大使に、40年以上に及ぶ外交官生活を振り返ってもらった。 ■国連部隊と仏軍、ついに動く 《2011年4月6日、コートジボワールにある日本大使公邸が襲撃された事件後、外交団をはじめ外国人の命が危機にさらされている、とのニュースが連日、世界中を駆け巡った》 内政干渉になるとして、それまで介入しなかった国連部隊とフランス軍が初めて、外交団救出のため、装甲車を出動させました。 そうなると、傭兵たちは動けなくなり、戦況はバグボ大統領に不利となった。ついに5日後、バグボ氏は追い詰められ、大統領官邸の塹壕で逮捕されました。 一方、〝もう1人〟の大統領、ワタラ氏は籠城していたホテルから出て、正式に大統領に就きました。 ■「日本大使が戻って来た」 《約1カ月後、情勢が落ち着き、ワタラ大統領の就任式典が行われた》 国連の潘基文事務総長やサルコジ仏大統領ら22カ国の首脳が出席する予定だった。式典会場には、何千人という人々が詰めかけ、式典開始を待っていました。 私たち大使一行が入場するや、座っていた人々がどよめきました。誰となく立ち上がり、拍手を開始した。 「潘事務総長か、サルコジ大統領が入場してきたのだろう」。こう思って後ろを振り向いても、誰がいるわけでもない。 前を見ると、何と、私が巨大スクリーンに大写しになっていた。拍手は私に対して、だったのです。 私は気恥ずかしさを隠しながら、知り合いたちと肩を抱き合って挨拶。これもスクリーンに大写しとなった。会場の人々が立ち上がり、「日本大使が戻ってきた」と声を上げていました。 コートジボワールの人々は私の事件を知っており、私の無事を喜んでくれていたのだ…。感激の瞬間でした。 中継のテレビカメラは国内だけでなく、西アフリカでも映像を流した。「あなたはあの日、隠れたヒーローだったね」。後日、アフリカ各地の友人からこう言われ、恐縮したのを覚えています。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする