史上初のC降格、サンプドリアが抱えていた大問題…シンガポールの「影のオーナー」が送り込んだ役職のない人物が主導権、「マンチーニ一派」の処遇は不明【現地発コラム】

5月13日火曜日に行なわれたイタリア・セリエB(2部リーグ)のレギュラーシーズン最終節(ローマ教皇フランシスコの死去を受けて延期となっていた第34節)で、20チーム中16位と残留争いの渦中にあったサンプドリアが、5位ユーベ・スタビアと0ー0の引き分けに終わって18位に転落。クラブ史上初めてとなるセリエC(3部リーグ)への降格が確定した。 サンプドリアといえば、イタリア随一の港町ジェノバにおいて宿敵ジェノアCFCと勢力を二分し、セリエAの歴史に重要な足跡を残したクラブ。1980年代末から90年代初頭にかけては、FWジャンルカ・ヴィアッリ、FWロベルト・マンチーニ、GKジャンルカ・パリウカらを擁して89ー90のカップウィナーズカップ、90ー91のスクデットを制覇し、91ー92のチャンピオンズカップ(現チャンピオンズリーグ)では決勝進出を果たした(バルセロナ「ドリームチーム」に延長で敗れた)。 その後も、99年からの4シーズンをセリエBで過ごした一時的な低迷期を除けば、ほぼ安定してセリエA中堅クラブとしての地位を保ち、アントニオ・カッサーノ、ジャンピエロ・パッツィーニ、マウロ・イカルディ、ファビオ・クアリアレッラといったアタッカーたちの活躍でカルチョの世界を沸かせてきた。 ところが2010年代末になると、クラブは少しずつ負のスパイラルに陥って行くことになる。当時のオーナー会長マッシモ・フェレーロが、本業である映画、観光事業の不振から資金難に陥って、クラブの経営も苦しくなり始め、21年12月には、本業関連会社の偽装倒産容疑などで財務警察に逮捕されるという事態に進展。サンプドリアは直接的には無関係だったものの、オーナー会長が不在となってクラブ運営は大きな困難に陥った。22ー23シーズンにセリエA最下位で12年ぶりのB降格を喫したのは、必然的な結果だった。 降格直後の23年夏、前年までプレミアリーグのリーズ・ユナイテッドを保有していたアンドレア・ラドリッツァーニが、同じイタリア人でロンドンに本拠を置く投資会社を経営するマッテオ・マンフレーディと共同でクラブを買収し、借入金返済と増資を通じて破産の危機を回避した時には、ようやく明るい未来が開けたかに見えた。 しかし、アンドレア・ピルロを監督に迎え、1年でのセリエA復帰を目指したこのシーズン、サンプドリアは開幕後2か月を終えた時点で降格圏に沈み、後半戦に入って盛り返したものの最終的には昇格プレーオフ圏内滑り込みの7位止まり、そのプレーオフでも早々に敗退と、不本意な結果に終わる。 あらためてセリエA復帰を目標に掲げた今シーズンは、チーム強化の鍵を握るスポーツディレクター(SD)のニコラ・レグロッターリエを解任し、その後任にかつてサンプでDFとしてプレーし、引退後はエンポリでSDとして実績を積んだピエトロ・アッカルディを招聘。陣容を大幅に入れ替えて開幕に臨んだ。 その新SDアッカルディは、就任当初から折り合いが悪かった指揮官ピルロを、開幕3試合を1分け2敗で終わったところで電撃解任。ピルロとはまったく異なる守備的な戦術を持つアンドレア・ソッティルを据える。しかしソッティルもチームを軌道に乗せられず、12月初めの第16節、首位サッスオーロに1ー5の惨敗を喫し、降格ゾーンまでわずか1ポイントの15位に転落したところで解任の憂き目に遭う。 だが、二度にわたる監督交代を経てもなお、シーズンのネガティブな流れが変わることはなかった。3人目の指揮官に選ばれたレオナルド・センプリチも、4月初めまでの16試合で2勝しか挙げられず、順位も残留ラインぎりぎりに貼り付いたまま。設立以来一度も経験したことのないセリエC降格の危機が現実になるに連れて、クラブの内外はパニックに近い状態に陥って行った。 サンプドリアがシーズンを通して不振から抜け出せなかった背景には、クラブ経営レベルでの大きな問題があった。23年夏に共同オーナーとなった2人のうち、ラドリッツァーニはそれから半年あまりが過ぎた24年3月にクラブを去り、マンフレーディが単独オーナーとして会長の座に就いていた。しかし実のところこのマンフレーディは、その背後にいる「影のオーナー」に名前を貸しているダミーでしかなかったのだ。 この事実が明らかになったのは今年1月、ノルウェーに本拠を置く独立系のサッカー専門調査報道メディア『ジョシマール』によって。マンフレーディが経営する投資会社は、サンプ買収から間もない23年10月、英国のオフショアであるマン島に本拠を置く別の投資会社に経営権が移っており、その会社のオーナーは「Fun88」というオンラインギャンブルサイトを保有するテイ・ウェイジンというシンガポール人だというのが、その内容だった。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする