10年前、20年前、30年前に『FRIDAY』は何を報じていたのか。当時話題になったトピックをいまふたたびふり返る【プレイバック・フライデー】。今回は10年前の’15年5月15・22日号掲載の『船橋18歳女帝の魔性と埋め殺し3人男「底なしの鬼畜道」』を紹介する。 「連絡の取れない少女がいて、埋められたという話がある」千葉県船橋東署にそんな通報があったのは’15年4月21日のことだった。その後24日までに少年、少女を含む犯行グループ4名が全員逮捕され、その供述により千葉県芝山町の畑からXさん(当時18歳)の遺体が埋まっているのが発見された。犯行はXさんを生きながらにして埋めるという残虐なものだった──(《》内の記述は過去記事より引用。年齢・肩書はすべて当時のもの)。 ◆高校の同級生を拉致して殺害 《〈みかけて〉 〈つかまえた〉 〈たまたまほてるからでるのみて捕まえた♡〉 ’15年4月19日、日曜日の夜10時半近く。A子(18)は「LINE」で、友人にこんなメッセージを送っていた》 畑に掘られた深さ1mほどの穴から、Xさん(18)の遺体が発見されたのは、それから5日後の4月24日だった。同日までに監禁容疑で逮捕されたのはA子の他、鉄筋工の少年B(16)、A子の知人の無職・C(20)とその仕事仲間の無職・D(20)の4人だった。中でも23日にCが出頭してXさんの殺害について供述したことで一気に捜査が進展した。 Xさんが連れ去られたのは19日の夜。千葉市内の繁華街を歩いていたXさんに顔見知りだったA子が声をかけ、Bが運転していた車に乗せた。そして数百m離れた場所で待機していたCとDが乗ったレンタカーの車内に監禁したのだ。車内にいた2~3時間の間にXさんは4人に暴行されたようで、顔が腫れ上がるほど殴られていた。 《「A子は明らかにはしゃいでいたようで、現場で『やっちゃえ、やっちゃえ!』とCらをけしかけていたようです。発見されたXさんの遺体は、正座するような姿勢で仰向けの状態で発見されました。頭部には粘着テープが何重にも巻かれており、口の中には布のようなものが詰められていた。手首は事前に購入していた、結束バンドで縛られていました。司法解剖の結果、窒息死の可能性が高いと判断された。Dの供述などと合わせて、Xさんはどうやら生き埋めにされたようです」(全国紙記者)》 A子以外の3人の男たちは全員Xさんとは面識がなかった。何が彼らをこれほど凄惨な凶行へと駆り立てたのだろうか。 XさんとA子は船橋市内の県立高校の同級生だった。二人とも高校を中退し、家を出て友人の家を泊まり歩くという生活をしていた。そして夜の街と関わりを持つようになった。 ◆犯人たちの”素顔” 《「Xちゃんは千葉駅近くのホストクラブによく通っていました。お気に入りのホストのために相当おカネを使っていたようです。A子ちゃんもホスト遊びが好きで、二人の指名するホストがかぶることもあったみたいです。A子ちゃんは津田沼のキャバクラで働いていたみたいですが、Xちゃんは風俗で働いていました」(Xさんと同じ店で働いていた従業員)》 Xさんは、事件当時は風俗店をかけ持ちして働いていたが、それでもホストクラブ通いにはカネが足りず、A子からも5万円を借りていたという。 また、Xさんは風俗店に体験入店しては辞めていた。写真入り身分証の代わりに使うために、卒業アルバムを何人もの同級生から借りたものの、それを返していなかった。連絡を取ろうとしても音信不通のXさんにA子が憎悪をつのらせ、犯行に踏み切るきっかけになったようだ。A子は3人の男を集めた。それが、CとD、そして途中から合流した少年Bだった。彼らはどんな人物だったのか。 《「C君は地元の成田だけじゃなく、若い不良の間では有名でした。手首までびっしり刺青が入っていて、ヤクザにまでケンカを売るようなぶっ飛んだ人。ただ、頭は切れるので自分ではあまり手を出さない。だから、事件を起こしたと聞いてびっくりしました」(地元の知人) DはCの弟分のような関係で、1年ほど前から同じ建設関係の会社で職人をしており、一緒に寮にも住んでいたようだ。Dの祖母が話す。 「あの子は勉強が嫌いだったので、中学を卒業した後、学校の紹介で成田空港で荷物の運搬をする仕事をしていたんです。2年ほどは真面目に働いていたんですが、なぜかその仕事は辞めてしまいました。去年の8月に、Cさんに誘われて家を出て寮に入ったんです。今年の初め頃に職場の先輩から『D君、すごく頑張ってくれています。みんなからも好かれていますよ』と電話をいただいたんですが……」 Bは暴走族出身者で構成され、音楽系イベントを仕切る半グレ集団の一員で、A子とは「交際関係にあった」と一部で報じられていた。なぜ彼らは、A子の招集に応じたのか。 「A子には年下の交際相手がいたようですが、Bとも”セフレ”のような関係だったようです。二人でよく千葉市のクラブに遊びに行っていて、大麻を吸いながら、イチャイチャしている姿が目撃されています。A子から『シメたいヤツがいる』と頼まれた主犯格のC容疑者は、『過去にA子に惚れていた』という情報もあり、A子の要求に応じてしまったのではないか。DはCに声をかけられて、加わったようです」(前出・記者)》 A子はまるで女帝のように、自らメンバーを集めてXさんを連れ去る計画を練っていたのだ。そしてついに4月19日の夜、Xさんを繁華街の路上で発見、拉致したのだった。 千葉県警は殺害容疑での4人の再逮捕に向けて捜査を進めていた。 ◆「殺さないで。死にたくない」 ’15年5月13日に4人はXさんへの強盗殺人容疑で再逮捕となり、6月4日にCとDは強盗殺人、逮捕監禁罪などで起訴された。未成年だったA子は、いったん家裁送致されたが、強盗殺人と逮捕監禁罪で起訴。Bも家裁送致されて強盗殺人については共謀関係がないとして不起訴となっている。A子、C、Dの3人は無期懲役の判決を受けて’19年6月までに全員の刑が確定している。 裁判では4人のXさんに対する血も涙もない所業が明らかになった。監禁された車内でXさんは殴られたりタバコの火を押し付けられるなどの暴行を受けたうえに、Dから「お前は死ぬんだよ」と”死刑”を宣告されたという。 そして前日にDが穴を掘っておいた畑に移動。CとDがXさんを穴がある場所まで連れて行き、「ちょっとだけ埋めておいて」と言い残して、CはいったんA子とBが乗っている車まで戻った。 Dが穴の中のXさんに土をかけ始めるとXさんは「殺さないで。死にたくない」と泣きながら命乞いをしたという。しかし、その声が周囲に聞こえることを恐れたDは焦ってXさんの顔や体が完全に見えなくなるまで埋めてしまったのだった。 3人が現場に戻ってきて、Xさんをすでに生き埋めにしてしまったことを知ったCは「お前もう埋めたのか。鬼だな」と、おどけたように笑っていたそうだ。 A子は公判ではXさんに対する殺意はなかったと主張していた。殺害計画については「聞かされていなかった」「(貸した)卒業アルバムがある場所に行ってくれるんだと思った」と証言していた。しかし、犯行後に彼女は嬉々としてXさんを生き埋めにしたことを周囲に吹聴しており、言い分は認められなかった。 服役中のA子と手紙のやり取りをしているというノンフィクションライターの片岡健氏は’24年9月27日配信の『日刊ゲンダイDIGITAL』で当時27歳となっていた彼女の言葉を紹介している。 「どうでもいい人と友人ヅラして上辺だけで付き合っていました。(中略)そんなちっぽけな人間関係しか築いてこれなかったから、弱い自分がいたから、事件を防ごうと思えばできたはずなのにできなかった。今更後悔しても終わってしまった事を嘆いてもどうする事もできませんが」 凶行はもしかすると“幼さ”ゆえの愚行だったのかもしれない。しかし、大人になってから犯した罪を悔いても、彼女の言う通りどうすることもできないのだ。