空爆激化でイラン国民が首都から避難、生活必需品の買いだめも

Parisa Hafezi [ドバイ 16日 ロイター] – イランの首都テヘランでは、イスラエルによる空爆の激化を恐れて住民が家を離れ、生活必需品を買いだめする動きが広がっている。 イスラエル軍はイランの民間人に対し、安全のために一部地域から避難するよう警告し、空爆が拡大する可能性を示唆した。 イラン当局はこの警告を「心理戦」として非難し、国民に冷静な対応を呼びかけている。しかし、国営テレビは首都からの脱出を図る車で道路が渋滞する様子を放映した。 1000万人以上が暮らすテヘラン在住のシャフリヤルさん(38)は電話で、「どこへ行けばいいのか。どれくらい家を空けなければいけないのか」と訴えた。美術教師のアルシアさん(29)は、紛争が終わるまで、家族とともにテヘランから東へ約50キロ離れたダマバンドの町へ避難すると語った。 アルシアさんは「両親はおびえている。攻撃が毎晩あり、空襲警報も避難所もない。なぜ我々がイラン政府の敵対政策の代償を払わなければならないのか」と、当局からの報復を恐れ、名字を明かさずに語った。 攻撃はイラン全土に恐怖を広げ不安をもたらし、安全対策、特に適切な防空壕の不足という深刻な問題も露呈した。 イランは複数の地下防空「都市」を建設していたが、公共の防空壕は不足している。政府は15日、モスク、学校、地下鉄を避難所として24時間開放すると発表した。 政府職員のゴラムレザ・モハンマディさん(48)は「警報も避難所もない。今ではATMや銀行から現金を引き出すことさえできない」と述べ、「テヘランの外で家を借りるのも難しい。店主らが商品の値段を上げているため、食料品の値段は毎日上がっている」と語る。そして、「絶望している。2人の子供はおびえ、攻撃、爆発の音で夜も眠れないが、行く場所がない。ダイニングテーブルの下に隠れている」と続けた。 イランの死者は少なくとも224人に達し、その9割が民間人だとイラン当局者は発表した。イスラエルでは、イランの報復ミサイル攻撃により24人が死亡し、全員が民間人だった。 インターネットの接続状況を監視する独立機関ネットブロックスによると、イスラエルが13日に空爆を開始して以来、イランの国際インターネットアクセスが約50%減少した。イラン国内のオンライン接続が遮断されているというユーザーからの報告を裏付けた形だ。 国営メディアによると、イランの治安部隊はイスラエルとの接触を警告し、数十人が「イスラエルのためにスパイ行為をした、または嘘を広めて世論を扇動した」疑いで逮捕された。 <食料と医薬品の不足> イランの半国営ファルス通信は、15日以来、精鋭部隊「イスラム革命防衛隊(IRGC)」傘下の民兵組織バシジが国内各地に検問所を設置し、破壊行為を防止し、治安を強化するために夜間パトロールを実施していると報じた。 モハンマドさん(45)は、すでに妻と子供をテヘランからイラン南部の故郷に避難させたとし、「仕事があるので私は離れられなかったが、家族を安全にしたかった」と述べた。 テヘランの複数の地区がイスラエルのミサイル攻撃を受けた後、多くの住民は16日の夜に避難した。 教師のマリヤムさん(33)は「16日はひどかった。爆発が何度も続いた。多くの友人が今朝出発した。私たちもそのつもりだ。銀行からお金を引き出したい」と述べた。 テヘランのエクバタン地区の住民は「ある銀行では1億5000万リアル(約160ドル)が引き出し限度額だったが、ほとんどの銀行は3000万リアル(約32ドル)しか引き出せなかった」と語る。「銀行に行ったところ、皆が好きなだけ預金を引き出すと現金が足りなくなってしまうと言われた」と続けた。 テヘランの3人の店主はロイターに、人々が食料や調理用のガスボンベ、水を買いだめしていると語った。ラミンさん(48)によれば、彼の薬局は客でごった返しているという。 イラン政府は国民に対し、食料と医薬品の在庫は十分にあると保証したものの、ラミンさんは「人々は薬、特に高齢者は生活必需品が戦争のせいで不足するのではないかと恐れて買いだめしている」と語った。 元銀行員のゼイナブさん(67)は「政府を信用していない。イスラエルにイランを攻撃する度胸はないと彼らは言っていたのに、この有り様だ」と語る。「私には子どもと孫がいる。今のうちに買い込んでおかないといけない。何が起こるか、この戦争がいつ終わるか誰もわからない」

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする