髙橋海人(King & Prince)と中村倫也がW主演を務めるドラマ『DOPE 麻薬取締部特捜課』(TBS系)。異能力と新型ドラッグ「DOPE」をめぐる近未来の攻防を描く本作は、相性最悪のバディの行方と特捜課を取り巻く陰謀が回を追うごとに輪郭を増している。 第2話では、前回に続いて才木(髙橋海人)が背負う家族の問題や、陣内(中村倫也)の内に隠された過去が徐々に浮かび上がり、物語の奥行きを一層深めてみせた。 新型ドラッグ「DOPE」への依存を一度は克服し、体調も安定を取り戻しつつあった才木の母・美和子(真飛聖)。しかし、次にもしDOPEに手を出したならば、その先に待っているのは、高い確率で死か、重い後遺症、あるいは“ドーパー”としての覚醒という現実だと突きつけられる。先天的に異能力を持ちながら、もはや力は美和子の命を脅かす毒に変わっている。スズメバチの毒のように、体に眠る力が諸刃の剣として機能することを知りながら、才木は母をどう守ればいいのか、深く答えのない問いを抱えたまま、特捜課としての任務に向き合わなければならない。 一方で、ホームレスに成りすましたジウ(井浦新)と接触する陣内の姿があった。ジウから何かの錠剤を受け取り、才木の存在について意味深な会話を交わす陣内。ジウが残した「お前にとって良き人間だったらいいな」という一言が、これからの2人の関係をどう揺さぶるのかが気にかかる。才木と陣内、それぞれの“正義”の形を弄ぶように現れるジウの立ち位置は、やはり底が知れない。 そんな折、街中の広場で警察官の拳銃がドーパーに奪われる事件が発生する。犯人は突如として姿を消すように動き回り、警官を射殺。混乱の中、人質を取って商業施設へ立てこもったとの一報が特捜課にも届く。陣内の助力が不可欠と判断した課長の指示で、才木は陣内を探しにパチンコ屋へ向かう。いつも通りの気怠げな態度を崩さない陣内に苛立ちながらも、才木はなんとか現場へ連れ出すことに成功する。 事件現場では、陣内が超視力を駆使して施設内部に潜入し、葛城(三浦誠己)の分析で犯人が幻覚に支配され、まともな判断力を失っていることが明らかになる。陣内はいつも通り、即座に“排除”を口にするが、才木は諦めずに「救う」可能性にすがろうとする。綿貫(新木優子)、柴原(豊田裕大)とともに、説得役を買って出た才木は、人質を盾に銃を向ける犯人に「あなたを助けたいんです」と訴えかけるが、その声は届かない。 銃口を向けられた才木たちは、一瞬の隙をついて人質の解放に成功するが、逃走する犯人に綿貫が食らいつく。「宇宙人」と罵倒された言葉に怒りを隠せず、彼女もまた、自らの能力で犯人を追い詰める。だが相手は瞬間移動と見紛う異能力を使い、才木たちの前から消えては現れる。その正体は高速移動能力であることが分かるが、柴原の嗅覚をもってしても、追い詰めたはずの犯人の執念と機転には一歩及ばない。 銃を構えた才木の手は震え、最後の一手に出ようとするが、銃は奪われてしまう。袋小路に追い詰められた才木たちの前に、ようやく陣内が現れる。瞬時に状況を把握すると、その超人的な身体能力で犯人を圧倒し、トドメを刺そうとする陣内。しかし、命乞いをするどころか「殺してほしい」と懇願する犯人の言葉に、陣内は「殺してほしいなら殺してやらねぇ」と吐き捨て、現場を立ち去ってしまう。助けるでも、殺すでもない陣内の残酷さと優しさの輪郭が、ここでもまた滲む。 事件の裏で、綿貫が抱える家庭の事情も描かれた。祖母の介護に追われ、背負いきれない現実を抱えている彼女の苦悩。葛城もまた、娘との関係が思うように進まず、特捜課という非日常の裏に、誰もが現実の“家族”を背負っていることを改めて突きつける。そして才木は、母をどう守るのかという重い問いと向き合い続けている。 逮捕された犯人の尋問では、DOPEの供給源がじわじわと輪郭を現す。いつも大麻を買っている売人から受け取ったと口を開く犯人。陣内が警官に扮したジウから受け取った「ジャオランバイニンソウ」と書かれた謎のメモは何を意味するのか。背後には広域指定犯罪組織である中華系マフィア“郊狼”の存在が浮かび、陣内と才木は雀荘へと足を運ぶことになる。 才木の未来予知がここでも発動し、郊狼の構成員から銃を奪うことに成功するが、これすらもジウの計算の内だった。敵対組織の弱体化はジウの狙いだったのだ。「今度は俺のために動いてくれよ」。陣内が残したその言葉の不気味さが、才木たちの前に新たな火種を落としていく。 そして陣内が帰宅したその先に描かれたのは、血だまりの中で倒れる妻・香織(入山法子)の姿だった――。それは現在のことではなく、7年前の出来事。自分が飲み会から戻ったとき、香織はすでに命を落としていた。このシーンで、静かに肩を震わせ、声にならない嗚咽を漏らす陣内を演じた中村倫也の表情には、言葉以上に深い絶望と人間味が滲んでいて、思わずこちらまで息を呑んでしまった。どこか冷たく達観して見える陣内の内側に、まだ誰にも癒されていない傷があることを、あの一滴の涙がすべて物語っていた。彼にとって才木の未来予知は、ただの特殊能力ではない。妻を殺した真犯人を突き止めるために必要な“鍵”なのだ。 「異能力バディもの」という枠を超えて、才木と陣内の生き様は第2話でより複雑さを増した。相反する正義、ジウが操る謎の駆け引き、誰もが抱える守りたいものと失ったもの。第3話で、この運命がどこへ向かうのかを見届けたい。