ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は27日、欧州連合(EU)のウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長と電話会談し、ウクライナの汚職対策機関の独立性と有効性を確保する法案について協議したと明らかにした。同国では、ゼレンスキー大統領が先に署名した新法について、汚職対策機関の独立性を制限するとして国内で抗議が相次ぎ、西側諸国も懸念を示していたため、大統領は独立性確保の新法案を提出していた。 ゼレンスキー大統領はソーシャルメディア「X」への投稿で、ウクライナの欧州統合や対ロ制裁の強化のほか、ウクライナの汚職取り締まりインフラの機能について話し合ったと明らかにした。 「ウクライナの汚職対策機関の独立性と有効性を確保する法案について話し合った」と大統領は書き、「欧州委員会がその専門性を提供してくれたことに感謝する。私たちは同じビジョンを共有している。この法案が遅滞なく、来週にも可決されることが大事だ」と述べた。 ゼレンスキー氏はさらに、欧州委員会のウクライナ支援の仕組みで認められている資金援助を受け取れるよう、必要な国内改革を実施し続けていることを、フォン・デア・ライエン委員長に伝えたのだとも書いた。 ゼレンスキー氏は24日、国内の二つの汚職対策機関の独立性を回復するための法案を提出したと発表していた。同氏が22日に、国家汚職対策局(NABU)と特別汚職対策検察庁(SAP)を検事総長の管理下に置く新法に署名したことで、ウクライナ各地で抗議が続き、ウクライナを支援する西側諸国も深刻な懸念を示していた。 ゼレンスキー氏は当初、両機関から「ロシアの影響」を排除する必要があると述べていたが、ウクライナ内外から批判が続出したため、24日になって両機関の独立性を回復させる法案を議会に提出していた。ロシアの影響から両機関を保護する、「バランスの取れた」法案だと述べたが、詳細は示さなかった。 NABUは、この新しい法案が「両機関のすべての手続き上の権限と独立性の保証を回復する」と述べた。 22日に成立した新法の下では、大統領が任命する検事総長の管理下にNABUとSAPが置かれることになっていた。ゼレンスキー氏は当時、ロシアの影響を理由に、両機関の権限を制限する必要性を主張していた。その前日には、ウクライナの治安機関がロシアのスパイとされるNABU関係者らを逮捕していた。 この新法成立を受けてウクライナ各地では、ロシアによる全面侵攻が2022年2月に始まって以来、最大規模の抗議行動が続いた。多くの市民が、NABUとSAPの権限と実効性が著しく損なわれることを懸念し、街頭や広場に集まり新法撤回を要求。ゼレンスキー大統領が民主主義から遠ざかっているという批判を繰り広げた。 西側諸国がこの新法に不快感を示したことも、ウクライナ国内での抗議をさらに駆り立てた。ウクライナはEUの正式な加盟候補国で、フォン・デア・ライエン欧州委員長の報道官は以前、「法治主義と汚職対策はEU加盟に必要な、核心的要件だ」とウクライナ政府に警告していた。 欧州委員会は24日、ウクライナ政府が新法案を提出した動きを「歓迎する」と述べた。報道官は「我々の懸念が確実に考慮されるよう、ウクライナ政府と協力している」と明らかにした。 NABUとSAPは、2014〜15年に欧州委員会と国際通貨基金(IMF)がウクライナとEUのビザ自由化交渉の条件として要求し、設置された。 ウクライナ野党議員のオレクシー・ゴンチャレンコ氏は、ゼレンスキー氏が「汚職対策機関の独立性は保証されなくてはならない」と述べたことに触れ、「まずそれを奪っておいて、次に保証しなければならないと言う。では、これは一体、何のためのことだったのか」と批判した。 ゼレンスキー氏は24日、ソーシャルメディアに投稿したメッセージで、新法に対する抗議や反発には触れないまま、「すべてのウクライナ国民の立場を尊重することが重要で、ウクライナを支えるすべての人々に感謝する」と述べた。 (英語記事 Zelensky backtracks on law over anti-corruption bodies after protests)