警察庁は機械メーカー「大川原化工機」のえん罪事件をめぐり、警察庁外事課における当時の対応の反省と、それをふまえた再発防止策を明らかにしました。 「大川原化工機」の大川原正明社長らは2020年、軍事転用可能な噴霧乾燥機を不正に輸出したとして逮捕・起訴されましたが、約1年間勾留された後、犯罪にあたるかどうか疑いが生じたとして、起訴が取り消されました。 社長らは2021年、捜査は違法だったとして国と都に損害賠償を求めて裁判を起こし、国と都におよそ1億6600万円の賠償を命じた東京高裁の判決がことし6月に確定しています。 これを受け警察庁は、警視庁から捜査に関する報告を受けていた、警察庁外事課の対応の反省点をまとめました。まず、この事件は2013年に噴霧乾燥機が外為法上の規制対象物品に追加されて以降、初めて規制要件に該当するかを検討したもので、同種事案を捜査する全国警察の先例となりうるものだったとしています。 そうした中、警察庁外事課は、警視庁が当初、経済産業省から否定的な回答を得ていた経緯などについて報告を受けていましたが、当時の担当者は「経済産業省と都道府県警との協議はいつものことで問題意識を持たなかった」としました。 今回の反省点として、警察庁外事課は全国的な先例となりうる中で前例を踏襲するのではなく、法令解釈に議論があった経済産業省との協議にも主体的に関与すべきであったと考えられるとしました。 また捜査の消極要素となりうる「大川原化工機」の関係者の証言についても報告文書は保管されているものの担当者は存在を認識しておらず、警察庁として警視庁に慎重な検討、吟味を促すことはなかったとしています。 これについては、警視庁からの報告の内容を精査し、規制要件の該当性に疑いが生じうる供述については、その詳細を確認したり、消極要素の慎重な検討を促したりするなどすべきだったとしました。 警察庁は、これらの反省点をふまえ、再発防止策を明らかにしました。 まず都道府県警が大量破壊兵器の製造につながりうる物品の不正輸出が疑われる事案の情報を得た際には、すみやかに経済産業省に通知して調査を求め、業者への指導などの対応を要請します。 都道府県警と経済産業省の協議には、警察庁外事課の担当者が参加して調整を行うことも明記しました。また、こうした事案への対策の評価については、検挙だけでなく未然に防止できたことを積極的に評価するようにするということです。さらに、不正輸出にからむ捜査では容疑者の取り調べの録音・録画を原則として実施することとしています。 そして、ことし10月をめどに「適正捜査指導室」を警察庁警備企画課に設置し、都道府県警の公安・外事部門の捜査が緻密かつ適正に行われるように指導するほか、警察内部からの相談、意見を受け付けることとしました。 各県警には「警備事件指導官」を置き、指導を行います。捜査の秘匿性の確保が必要で部門の垣根を越えにくい公安・外事部門に他の部門からの人事交流を推進し、適正捜査を確保するとしています。