座間男女9人殺害事件の白石隆浩死刑囚の刑が執行された。鈴木馨祐法務大臣が6月27日午前10時半の記者会見で明らかにした。4日前の23日に執行命令書にサインをした、と述べた。 白石の死刑執行を機に、事件を振り返りつつ、白石に手紙を出していた複数の女性に話を聞いた。獄中結婚の相手を探していた動きもあったというが、結果的に、相手は見つからず、獄中結婚はできなかった。 6月27日の朝、私はテレビを見ていたら、死刑執行を伝えるニュース速報が流れた。当初は誰が執行されたのかはわからなかった。オンラインのニュースで調べてもすぐには不明だった。 そして数分後、裁判を傍聴していた女性、アキ(仮名、50代)から電話があった。落ち着かない様子で「(白石の死刑が)執行されましたね。最近、似たような事件が起きたからですかね」と、話していた。電話で話をしていると、事件発生を知った時のことを思い出した。 事件を振り返ると、始まりも一本の電話からだった。2017年10月、テレビ局の記者から電話があった。その内容は、アパートから9人の遺体が見つかったというのだ。被害者は、Twitter(現在のX)で「死にたい」とつぶやいていた人たちだった。筆者は当初、自殺志願者を集めて死のうとした「ネット心中」ではないかと思った。そうならば、集まったのはこれまでで最も多い人数になる。 「ネット心中」とは、自殺掲示板や心中掲示板、あるいは匿名掲示板、SNSで、一緒に自殺する相手を募集し、実行することだ。2000年当初から発生し、03年から04年にピークを迎える。複数を集めるが、これまで最も多い人数は7人だ。04年10月に男女7人が亡くなっている。 最近では、SNSが舞台になることもある。白石が起こした事件が発覚する前の17年9月1日、岡山県内の男が自殺幇助(ほうじょ)罪の疑いで逮捕された。男は、Twitterで一緒に死ねる相手を募集。広島県内の会社員の女性(当時21歳)、無職の女性(同38歳)と3人で集団自殺を計画した。 会社員の女性から自殺をほのめかすメールを受け取った知人が警察に通報した。捜査の末、警察官が3人を発見。男は意識がもうろうとしていた状態で車外に倒れていた。 こうした「ネット心中」事件が繰り返されていたため、一報を聞いた私もその取材経験に引っ張られていた。しかし、捜査が進むにつれて、「ネット心中」ではなく、Twitterで「死にたい」とつぶやいていた男女を殺害したということが白石の供述でわかってくる。