米国務省がICC判事ら4人に制裁、「安全保障上の脅威」と ICCは遺憾の意を表明

米国務省は20日、アメリカとイスラエルの市民に対する訴追を試みたとして、国際刑事裁判所(ICC)の判事2人と検事2人に対して制裁を科すと発表した。ICCは、制裁措置は「遺憾」だとの声明を出した。 マルコ・ルビオ米国務長官は、ICCを「国家安全保障上の脅威」だとし、アメリカとイスラエルに対する「法的戦争の道具」になっていると非難した。 アメリカの同盟国イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、この制裁措置を歓迎した。ICCは昨年11月に、パレスチナ・ガザ地区での戦闘をめぐり、イスラエルのネタニヤフ首相とヨアヴ・ガラント前国防相、ハマス軍事部門カッサム旅団のモハメド・デイフ司令官に対し、戦争犯罪や人道に対する犯罪の疑いで逮捕状を出している。 今回の措置に対しては、ICCと同様、フランスも非難。制裁対象にフランス出身の判事ニコラ・ギヨー氏が含まれていることに、フランスは「失望」を表明した。 アメリカが制裁対象として名前を挙げたのは、ギヨー氏と、カナダ出身の判事キンバリー・プロスト氏、フィジー出身の次席検事ナザット・シャミーム・カーン氏、セネガル出身の次席検事マメ・マンディアイ・ニアン氏の計4人。 ルビオ氏は制裁発表の声明で、ICCの「政治化、権力の乱用、司法権の非合法な拡大」を非難した。 ICCは、ジェノサイド(集団虐殺)や人道に対する罪、戦争犯罪について訴追権限を持つ国際的な司法機関。 ICCは今回の制裁を、ICCの独立性と公平性に対する「甚だしい攻撃」だと指摘。 「これはルールに基づく国際秩序、そして何よりも、世界中の何百万人もの罪なき被害者に対する侮辱でもある」と付け加えた。 AFP通信によると、フランス外務省はこの制裁を「司法の独立という原則に反するもの」と批判した。 一方、イスラエルのネタニヤフ首相は今回の決定を歓迎し、「イスラエルに対する虚偽の中傷キャンペーンに対する断固たる措置」だと称賛した。 ギヨー判事が制裁対象になったのは、ネタニヤフ氏とガラント氏に対する逮捕状を承認したことが理由だと、米国務省は説明した。 また、カナダ出身のプロスト判事については、アフガニスタンでアメリカ人当局者に関する調査を行ったことが制裁の理由だとした。カーン氏とニアン氏については、「イスラエルに対する非合法な行為」への責任を負っているためだと付け加えた。 制裁措置により、4人の米国内の資産などが凍結されることになる。 ■ガザ攻撃への対応めぐり、制裁相次ぐ アメリカは今年2月にも、アメリカとイスラエルを標的にした「非合法で根拠のない行動」を理由に、ICCに対する経済制裁を発動。対象には、カリム・カーン主任検察官などが含まれていた。 6月には、アメリカとイスラエルに対する「不当な」訴追を理由に、ICCの判事4人に対する制裁を発表している。 国連のフォルカー・トゥルク人権高等弁務官は以前、「法の支配の尊重」とは真逆の決定だとして、ICC判事4人に対する制裁を解除するよう求めていた。 アメリカは7月にも、国連人権理事会のフランチェスカ・アルバネーゼ特別報告者に制裁を科すと発表した。アルバネーゼ氏は、イスラエルによるガザ地区への軍事攻撃に対して厳しい批判を続けてきたことで知られている。 ルビオ氏は当時、アルバネーゼ氏に対する制裁措置について、同氏がICCを支持していることに関連していると述べた。また、同氏がアメリカ人やイスラエル人の起訴を目指すICCの活動に直接関与しているためだとした。 これに対し、アルバネーゼ氏は、ICCへの支持を表明する過去の発言を再投稿し、自身がICCの創設国であるイタリアの出身であり、同国の法律家や裁判官は「多大な犠牲を払い、時には命をかけて正義を守ってきた」と記した。 その上で、「私はその伝統を尊重し、継承するつもりだ」と書き込んだ。 (英語記事 ICC 'deplores' new US sanctions on judges and prosecutors)

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