神戸市のマンションで、片山恵さん(24)が殺害された事件。殺人の疑いで逮捕された新宿区の会社員・谷本将志容疑者(35)の犯行前の足取りが、さらに見えてきました。 神戸の大手損害保険会社で働く片山さんが退勤したのは、20日午後6時半ごろ。その直後から、谷本容疑者とみられる男が、あとをつけていたとみられています。阪神電鉄やポートライナーを片山さんと一緒に乗り継いで、マンションに侵入したということでしょうか。その間、約50分以上。 捜査関係者への取材で、谷本容疑者は、休みを利用して、事件の3日前から神戸に滞在していたことも新たに判明しました。宿泊先は、片山さんの職場から数百メートルしか離れていません。 事件当日も泊まる予約を入れていましたが、犯行後、宿泊はせずに、そのまま東京方面へと逃走したとみられています。 奥多摩町で確保されるまで、2日足らず。それまで、どこで、何をしていたかは、明らかになっていません。 ただ、都心で暮らしていた谷本容疑者と、神戸との接点は、少しずつわかってきています。 谷本容疑者の親族 「お父さんは大阪だから、そっちで大きくなっている。元々は親戚、みんな神戸だから。去年、『おじいさんの墓参りに行きたい』と言って、夏ごろ一緒に行った」 谷本容疑者は16歳で、情報系の高等専修学校を退学したあと、神戸市内の建設会社で10年以上働いています。谷本容疑者にとっては、最も長い職歴です。 谷本容疑者は、2022年に事件を起こしています。 女性の首を絞めたなどとして、ストーカー規制法違反、住居侵入、傷害などの罪で起訴されます。部屋に1時間ほど居座って、女性に好意を伝えていたということです。 当時を知る職場の関係者は、こう話します。 神戸時代を知る職場関係者 「今回の事件と同じように、女性に付きまとい、オートロックをすり抜けたようだ。谷本は『首は絞めていない。部屋にも入っていない』と言っていた。本人も仕事は辞めるということだったので、それ以上、質問もしなかった」 この裁判の判決。 安西二郎裁判長(2022年の判決) 「路上で見かけ、一方的に好意を抱いた女性に対し、約5カ月にわたり、動画撮影などを伴うつきまといや、住居付近のうろつきなど、ストーカー行為に及んでいた。とりわけ傷害の様態は、必死に逃げようとする被害者に対し、首を強く絞めるなど危険なもので、被害者は死の恐怖に直面していた」 神戸地裁の判断は、執行猶予付きの有罪判決でした。まだ執行猶予期間中だったのに、再び事件を起こしたことになります。 当時、裁判長は、こう指摘していました。 安西二郎裁判長(2022年の判決) 「住居侵入・傷害事件の翌日に、謝って許してもらいたいと考えて、被害者の心情に思いを致すことなく、被害者方へと赴こうとした経緯からしても、思考の歪みは顕著である。再犯が強く危惧されると言わざるを得ない」 裁判のあと、関東に出て、新宿区にあるいまの会社の面接を受けたのは、2023年5月でした。 勤務していた会社の代表 「逮捕歴はあるか聞いたところ『逮捕歴はありません』という返答。関西から関東に来た理由は『昔、やんちゃをしていて、悪い友だちと縁を切るために関東に来た』と」 これまでも休みの明けに無断欠勤したことがあったため、22日、谷本容疑者に宛てて、こんなメッセージを送っていました。 谷本容疑者に送ったメッセージ 「どうしたのかな?これでは前回と同じだよ。辞めるなら、ちゃんと言わないと」 このメッセージを送った6時間後、身柄が確保されました。 谷本容疑者は、片山さんを刺したことは認めていますが 「殺意を持っていたかは、わからない」「全く知らない人」と供述しています。 これまでの捜査でも、2人の接点は確認されていません。警察は、面識がなかった可能性もあるとみて、調べを進めています。