遺族「許せない」検証不十分 墓前で厳しい問いに幹部らは…大川原冤罪 遺族に直接謝罪

大川原化工機をめぐる冤罪事件で、警視庁と検察の幹部が、勾留中に胃がんが見つかり、その後、死亡した元顧問・相嶋静夫さんの遺族に謝罪しました。 墓前で手を合わせる警視庁と検察の幹部たち。その直後、相嶋さんの妻(77)が読み上げたのは、当時、藁にもすがる思いで、東京拘置所の所長に送った手紙でした。 東京拘置所の所長に送った手紙 「拘置所の中では、ほったらかしにされ、食事もできず、日々、衰弱し、立つこともできない状態です。このまま夫は、見殺しにされてしまうのかと、いてもたってもいられず、気が狂いそうです。どうか、私の大事な夫を助けてください」 妻は、幹部らに、こう問いかけました。 相嶋さんの妻 「このような立場に立ったら、どうされますか。家族とか親族、聞かせてください」 東京地検市川宏次席検事 「大変、重い手紙の内容を、私たちに教えていただいて、大変、ありがとうございました」 相嶋さんの妻 「そういうことを聞いてるのではなくて、自分だったら、どう命を延ばす方法をとるか教えてください。私はわからなかった。拘置所の所長に手紙を出すのが精いっぱい」 東京地検市川宏次席検事 「ご家族のお気持ちを考えると、自分の身に置き換えて考えると、どれほどご心痛であったか、言葉もございません」 相嶋さんの妻 「自分たちは、こうはならないと自信がおありでしょうが、自分たちのお子さんだって、こういう目にいつ遭うかわかりませんよ。何の罪がなくたって、逮捕されちゃうんですから。そして、病気になったら、ほったらかしで。こんなひどいことないです」 相嶋さんは、治療のため、8度にわたり保釈を求めました。しかし、東京地検は病状の確認すらせず、一貫して反対。東京地裁もまた、保釈請求を退け続けました。 ようやく勾留が一時停止され、外部の病院に移されたときには、すでに病状は手の施しようがないほど進んでいました。 刑事被告人の立場のまま、最期を迎えた相嶋さん。これまで遺族は「真相が語られていない」として、謝罪を拒んできましたが、警視庁と最高検が公表した検証報告書を一定評価し、謝罪を受け入れました。 しかし、その胸の内は。 相嶋さんの妻 「謝罪は受け入れますが、決して許すことができません。冤罪事件のせいで、みんなパーになってしまいました。もう老後の生活はありません」 相嶋さんの次男 「警視庁の検証は不十分で、深く失望しております。都合の悪い事実に触れていない。第三者の関与もなく、結果は信頼できません。関係者の処分も軽すぎると考えています」 警視庁は、検証について、指揮系統の機能不全と結論付けましたが、冤罪の背景には、踏み込みませんでした。処分についても、警視庁で、実際に懲戒を受けたのは2人だけ。検察では誰ひとり、責任を問われていません。 こうした声に対し、25日、最高検察庁の山元裕史次長検事は、再検証や処分の見直しの可能性を否定しました。 遺族の問いは、司法全体に突きつけられています。 相嶋さんの長男 「(検証を)裁判所も検証すべきでしょう」 警察・検察が検証を公表した一方、保釈請求を却下し続けた東京地裁は、沈黙を続けたまま。裁判官の独立が理由です。 高田剛弁護士 「1人の裁判官の誤りではなく、組織として裁判所の考え方が、そういう常識で醸成されてるのでないかと。今後、二度と人質司法の被害者が生じないために、どうすればいいか、考える糧にしていただきたい」

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