弁護士の萩谷麻衣子氏は27日、テレビ朝日系「大下容子ワイド!スクランブル」(月~金曜午前10時25分)に生出演。神戸市のマンションで住人の会社員女性が刺殺された事件をめぐり、殺人容疑で逮捕された会社員谷本将志容疑者が、3年前も女性につきまとい傷害事件を起こし、執行猶予中に再び凶行に及んだことについて「いちばん考えないといけないのは、日本の刑事裁判の判決の選択肢が少なすぎること」と、指摘した。 谷本容疑者は2022年、20代女性の首を絞めた傷害などの罪で起訴。犯行現場は今回の事件と同じ神戸市中央区だった。裁判では懲役2年6カ月、執行猶予5年の有罪判決が言い渡され、今回は執行猶予中の犯行だった。当時の判決言い渡しの際、裁判官が「再犯が強く危惧されると言わざるを得ない」と指摘していたことも分かっている。 萩谷氏は「3年前の刑事判決ですが、裁判官は、再犯の恐れがかなり強いと懸念はするものの、犯罪の結果とそれに対する罰の均衡からすると、なかなか実刑という判断はできなかったのかなと思う。判決内容から、裁判官の苦悩と悩みみたいなものが受け取れると思う」と、当時判決を言い渡した裁判官の心境を推測。その上で「現在、再犯防止のためには保護観察という制度のほかに、公安委員会が出す禁止命令という制度がある。(禁止命令は)被害者の方の学校や自宅など一定の範囲に近づいてはいけないという命令を公安委員会が出し、命令に違反した場合は逮捕、起訴され、執行猶予中なら取り消され、収監され刑務所にいくことになる」「禁止命令は、被害者の保護にはなっていると思う」と述べた。 一方で「今回のように初犯の被害者と、次のターゲットの被害者が違う場合、次のターゲットに近づいたからといって、禁止命令違反と言うわけではなく、限界があると思う」とも指摘。さらに「いちばん考えないといけないのは、日本の刑事裁判の判決は選択肢が少なすぎる。執行猶予か実刑かが基本ですよね」と述べた。 「執行猶予をつけるからカウンセリングや治療を義務化することをセットにして、カウンセリングを受けないなら執行猶予を取り消すというような法改正をする議論が必要だと思う」と訴え、「禁止命令を出す時も、治療やカウンセリングをセットにするよう、裁判所が命令を出すというような改革が必要ではないかと思う」とも指摘し、現在の司法制度について問題提起した。