参院選候補者への投票の見返りに報酬の支払いを約束したとして、パチンコ店運営会社社長らが公選法違反容疑で逮捕された事件で、同社幹部らが従業員に投票を求めていた候補は、パチンコ業界を代表して擁立された「組織内候補」だった。 幹部らは「業界の発展のためにこの候補者に投票してほしい」と呼び掛けており、背景には、業界衰退への危機感などがあったとみられる。 投票依頼先の候補者は全国のパチンコ店営業者の団体「全日本遊技事業協同組合連合会」理事長の阿部恭久氏(66)。2014年に理事長に就任し、政治団体「全日本遊技産業政治連盟」が業界を代表する組織内候補として今年7月の参院選に擁立した。 捜査関係者によると、幹部らは従業員に投票を依頼するに当たって、「業界の発展のためにこの候補者に投票してほしい」などと呼び掛けていた。 同連盟のホームページによると、阿部氏も選挙を控えた5月の集会で「業界が抱える問題は根深く、今なお偏見や誤解に苦しんでいる。業界内部の努力だけでは限界がある。政治の場に、私たちの声を直接届ける必要がある」などと業界の苦境を訴えたという。 背景にはパチンコ店の減少などがあるとみられる。警察庁などによると、パチンコ店の営業所数は1995年に1万7000店舗以上あったが、その後減少し、24年には約6700店舗となった。