入院患者間の殺人の隠蔽(いんぺい)事件によって元院長らが逮捕された青森県八戸市の「みちのく記念病院」を巡り、県は2日、同病院を運営する医療法人「杏林会(きょうりんかい)」(東京、石山菜穂理事長)に対し、医療法に基づく改善措置命令を出した。適切な病院運営を確保するため医師の勤務内容を把握する体制を築くとともに、勤務時間などについて市や県に事実と異なる報告をした原因を調べて再発防止策を講ずることを求めた。同法に基づく改善措置命令の発出は県内で初めてで、全国では3例目。 医師の勤務体制や同市や県に虚偽の報告をしたことについて、病院側は今月30日までに県に改善計画を提出し、来年2月28日までに改善措置を行わなければならない。また、県が進捗(しんちょく)状況を確認するため、随時行う立ち入り検査を受け入れるほか、改善措置終了翌日から10日以内に県に改善報告を提出することになっている。命令には、県医療勤務環境改善支援センターの支援を受けることも盛り込まれている。 来年2月の期限までに必要な措置を講じない場合は、県が同病院に対して業務の全部または一部の停止を命じる場合がある。 元院長らが2月に逮捕(起訴済み)されて以来、県は市とともに医療提供体制の確認のため、立ち入り検査を重ねてきた。 3月には▽許可なく病室の用途を変更▽一部医師の勤務状況が出勤簿と整合せず、医師数を適正に算出できない-などとして、県と八戸市が改善勧告による行政指導を行っている。 その後の調査で、病院側が各医師の実際の出退勤状況を確認せず、事務職員が画一的にタイムカードを打刻していたことや、常勤医の勤務時間数に満たない医師を常勤と報告していたことが確認された。 これを受け、八戸市は7月、「医療法による行政処分の必要性が認められる」との通知を行政処分の権限を持つ県に通知していた。 県健康医療福祉部の守川義信部長は「(同病院は)調査に協力し、処分に対しても真摯(しんし)に受け止めている。改善措置を講じ、信頼回復の道を進んでいただきたい」と述べた。宮下宗一郎知事は「県の従来の検査態勢に課題がなかったのか検証を行いたい」とのコメントを出した。