「心神喪失で無罪」に納得できない人たち 再犯率の公表不十分、「加害者が野放しにされないか」不安の声

2022年9月、北海道北広島市で生活困窮者向けの宿泊施設が放火され、2人が死亡した事件で、元入居者の男が逮捕された。2025年9月17日、札幌地方裁判所は「心神喪失状態にあり、刑事責任能力がなかった」と判断し、男に無罪を言い渡した。 この判決を受け、SNSやニュースのコメント欄には疑問の声が相次いだ。たしかに、被害者や遺族の気持ちを想像すれば、怒りや疑問が湧き上がるのも当然だろう。 しかし、「心神喪失による無罪」となったからといって、加害者が野放しにされるわけではない。日本には、加害者を治療・監督する制度が整備されている。 ■無罪でも「医療観察法」の下で拘束される 日本の刑法第39条は「心神喪失者の行為は、罰しない」と定めている。だが、そのままでは「無罪=即時釈放」という印象を与えかねない。 そこで2005年に導入されたのが、「心神喪失者等医療観察法(以下、医療観察法)」である。この制度により、心神喪失によって無罪または不起訴となった者は、裁判所の決定により入院または通院による処遇が行われる。 入院処遇が決定された場合、平均で2〜3年間の入院が続く。『医療観察法統計資料 2020年版』(重度精神疾患標準的治療法確立事業運営委員会)によると、退院者の約25%が3〜5年、8%弱が5年以上入院していたという。 一方、通院処遇では原則3年、最長5年にわたり通院を行う。保護観察所の「社会復帰調整官」が定期的に面接し、医療機関や福祉と連携する体制が敷かれている。病状が悪化すれば、再入院の申し立ても可能だ。 つまり「無罪判決」が出た後も、数年にわたって拘束や監督が続くのである。

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