東京都世田谷区で発生した女性殺害事件で、警察は事件前、韓国から来日したパク・ヨンジュン容疑者(30)に帰国を促し、駅や空港まで同行するなどしたが事件は食い止められなかった。 警視庁によると、パク容疑者と自営業バン・ジ・ウォンさん(40)は日本語学習アプリを通じて知り合い、4月から交際。来日した同容疑者は先月23日からバンさん宅に滞在するなどしていた。 同29日未明、外出先でけんか別れしたバンさんは交番を訪れ、「暴力を振るわれた」などと訴えた。ただ事件化を望まなかったため、警察はバンさんに知人宅への避難を助言。バンさん宅に戻っていた同容疑者に口頭で注意し、今後近づかないとする上申書を提出させた。さらに大阪に行くという同容疑者に付き添い、JR東京駅まで送り届けた。 ただ、同容疑者は大阪に向かわず、同日のうちにバンさんのマンションに侵入していたことが翌30日、警備員からの110番で発覚。警察署へ連行したが、休日だったため、容疑を裏付ける防犯カメラの確認が迅速にできなかった。マンション側からの被害届も出されず逮捕を見送った。 そこで警察は帰国するようにパク容疑者を説得。関西空港発の帰国便を変更させ、千葉県の成田空港まで同行した。搭乗口まで付き添うことを要請したが許されず、警察官3人が保安検査場の外で、同容疑者が戻らないか30分以上監視した。航空会社に搭乗の確認を求めたが、「休日で対応は難しい」と断られた。バンさんには、同容疑者の出国が確認できていないため、知人宅への避難を続けるよう伝えた。 その後の捜査で、パク容疑者は搭乗口付近で搭乗をキャンセルし、空港を出て港区内のホテルに宿泊していたことが分かった。 同容疑者は31日朝、スーパーで果物ナイフなどを購入。今月1日午後1時半ごろバンさんを襲ったとされる。 ある捜査関係者は「交番を訪れた当日中に逮捕できていれば被害を防げたかもしれない」と悔しさをにじませた。