勤務中にアダルトサイト閲覧 フィルタリングすり抜けた「手口」

勤務中にアダルトサイト閲覧 フィルタリングすり抜けた「手口」
産経新聞 2012年10月7日(日)12時59分配信

 「仕事に関係のないサイトをみている」。こんな通報から発覚したのは、前代未聞のロングラン・サーフィンだった。大阪府立支援学校に勤務する50代の主査級男性事務職員が、9月20日付で停職3カ月の処分を受け依願退職した。個人に割り当てられた公務用パソコンで、インターネットのアダルトサイトなど、仕事に関係のないネットサーフィンをしていたのが処分の理由だ。閲覧期間は7年間で推計727時間。府のネットワークはアダルトサイトを含む、仕事と無関係なサイト閲覧をブロックする「フィルタリング」がかかっているが、この職員は今回、「抜け穴」があることも明らかにしてしまった。

 ■「足跡」残すお粗末さ

 不祥事が発覚したきっかけは今年7月、大阪府教委にかかってきた匿名の電話だった。

 「職場で仕事に関係のないインターネットサイトを見ている人がいる」。府教委はすぐに調査を開始。職員はアダルトサイトのほか、趣味のオーディオ機器の価格比較サイトを閲覧していたことを認めた。

 職員が閲覧に使用していたのは、学校の事務室にある個人に割り当てられた公務用パソコン。公務用パソコンは大阪府のネットワークを介さないとインターネットに接続することができない仕組みになっている。そのため、府庁が管理するサーバーには、全職員の直近2カ月分の閲覧記録が残っている。

 膨大な閲覧記録と本人の記憶をたどったところ、仕事と関係のないネットサーフィンは、前任の府立高校に勤務していた平成17年4月から始まり、閲覧時間は推計727時間にも達した。職員は府教委の調査に対し、「ストレスがたまっていた」と答えたという。

 このほか、公務用に割り当てられたメールアドレスで、家族らとプライベートな内容のメールを交わしていたことも明らかになった。今や携帯電話からもメールが送れる時代。「なぜわざわざ記録に残る公務パソコンを使ったのか」。あまりの“お粗末”さに、府教委幹部もあきれかえる。

 ■どうやって7年間も?

 府教委が全教職員に1人1台のパソコンを割り当てたのは16年のこと。この職員はその翌年から、仕事と関係のないネットサーフィンを続けていたことになる。

 しかも、727時間中、600時間が勤務時間中。7年も続いた白昼のネットサーフィンを、職場の同僚たちが気付く機会はなかったのだろうか。

 府教委によると、職員の座席は背後が壁。パソコンの画面はほかの教職員にとっては「死角」になっていたという。そのため生徒に見られることもなかった。

 この職員はさらに、ネットワークを監視する「目」もすり抜けた。

 府のネットワークは特定のジャンルに分類されるインターネットサイトを自動的に検出し、閲覧をブロックする「フィルタリング」がかかっている。わいせつな内容やギャンブルに関するサイトなどは業務に関係がないため、閲覧しようとすると「アクセスを制限しています」といったメッセージが表示される仕組みになっている。

 どうしても仕事に必要で、閲覧がブロックされた場合は、そのアドレスをネットワークの管理担当部署へ申請すれば、申請があった職員のパソコンだけフィルタリングを解除することができる。

 仕事に関係がないとの理由から、宝くじの当せん番号サイトも閲覧することができない。動画サイトもブロックする厳格なフィルタリングを、職員はすり抜けてしまった。

 ■職員の規範意識

 フィルタリングは、管理者が指定したアドレスのサイトはもちろん、アクセスしようとするサイト内に特定のキーワードが含まれていれば自動的に「業務に無関係」と判断され、閲覧はブロックされる−はずだった。

 ところが、府教委の担当者が実際に職員が見ていたサイトにアクセスしてみたところ、フィルタリングに引っかからず、閲覧できることが分かった。すり抜ける原因は不明のままだが、個人が開設したサイトはなぜか閲覧できたという。

 フィルタリングで閲覧がブロックされても、どのサイトにアクセスしようとしたかはサーバーに記録が残る。ただ、ブロックされたことは管理者に通知されるわけではない。

 ネットワークを管理する府IT推進課によると、記録量が膨大で、問題が起きない限り、職員個人の閲覧記録を調べることはないという。

 そもそも、プライベートと仕事の境界があやふやなネットサーフィン。「誤ってクリックしてしまうケースも考えられる。故意かどうか、いちいち調べていたらキリがない」(府IT推進課)のが現状だ。

 同課の担当者は「制限がかかる、かからないではなく、仕事に関係のないサイトを見ないのが当たり前」とつぶやいた。

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