イエスとはいったい何者だったのか?…人類史を二分した男の正体

科学と偶然だけでは、この世界を説明しきれない──不安定な世界の成り立ちを考える手がかりが、ここにある。 フランスで25万部超のベストセラーとなった教養書『神と科学 世界は「何」を信じてきたのか>』(日経BP)第19章「『イエス』とは何者か」より、一部を編集・抜粋。 ◇ ◇ ◇ 「イエスは何者なのか?」という不可避な問い「イエスとは何者か」は、誰も無視することができない問いだ。それは、説明不能で驚くべき、以下の4つの事実による。 【事実1:地球上の全人口80億人が、キリストの誕生年を基準に暦を数えている。これにはキリスト教徒ではなく、イエスの名前を聞いたことがない人々も含まれる】 現在、世界で発行されている文書(法律文書や出版物も含む)のほぼすべてで、イエスの誕生年を参照している。この、西暦による日時の表記を廃止しようとする試みは多くなされたが、それらはことごとく大失敗に終わった。 まずフランス革命の際には、1793年を新しい暦の1年目にするカレンダーをつくろうとした。しかしフランス以外には普及せず、そのフランスでも12年間しか続かなかった。 イタリアのムッソリーニも同様に、1922年を新しい暦の初年度にしようと試みたが、しかしこれもまた一時的な挑戦で終わっている。 もちろん、ユダヤ人、イスラム教徒、中国人は彼ら独自のカレンダーを持っている。しかしその使用はそれぞれの領域内のみの限定的なものだ。国際的または異文化間の交流のほとんどでは、イエスの誕生年を1年目としているのが実際なのである。 イエスの誕生年は絶対的で普遍的な子午線として扱われ、人類の歴史を「イエス以前(紀元前/B.C.)」と「イエス以降(紀元後/A.D.)」の2つに分ける一種の「時間的赤道」と考えることができるだろう。 【事実2:過去1世紀だけでイエスに関して2万冊以上の本が刊行された。毎年何百冊もの新刊が出版されるユニークな存在】 聖書は、世界史上もっとも広く配布され、あらゆる言語に翻訳されている本である。現在、25億人、つまり全人類の約3分の1が、自分はイエス・キリストの神性を信じていると語る。 【事実3:本来、イエスは無名の存在であるべきだった】 「もし、この世に生を受けた後、一度も語られることなく忘れ去られる運命にある者がいるとしたら、それはナザレ出身のぱっとしない職人のことである。彼は剣もペンも持たず、自国で職務に就いたこともなかった。財産も妻も子どもも人間関係もなかったこの大工は、自分を救世主だと宣言した。国の当局は彼を逮捕し、当時は一般的ではあったが不名誉な死刑を宣告された。支持者の大半は処刑時に彼を見捨て、彼の名はそこですっかり忘れられるはずだった。ところがその後、彼の名はあっという間に世界の歴史の中で一等地を占めることになる。本当に単なるガリラヤの小村の一職人がそのような名声を得たのか? これほど説明できないことはない」 私たちもそれは強く感じている。ナザレのイエスの運命は、理解を超えている。 【事実4:イエス自身が、「私は何者か?」という不思議な質問を、直接仲間に、あるいは間接的に私たちに投げかけている】 「イエスが言われた。『それでは、あなたがたはわたしを何者だと言うのか。』」(マタイによる福音書第16章15)は、一見すると簡単で無害な質問に見えるが、実際は手ごわい問題を提起している。というのも、論理的に答える方法はほとんどなく、しかもそうした考えのほとんどすべてを排除するに足りる情報が手元にあるからだ。 以下に、「イエスは何者か?」という問題に対して、歴史的に与えられてきた7つの答えを紹介しよう。あらゆる可能性を試し、論理的にあり得るとされるのが、この7つである。

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