摘発相次ぐトクリュウの海外拠点 特殊詐欺の「かけ子」逃げ出す背景に情勢の変化か

「途中で逃げ出してきた。日本に帰りたい」。カンボジアから特殊詐欺の電話をかけ、女性から現金をだまし取ったとして7日、警視庁に詐欺容疑で逮捕された見目英明容疑者(46)は、渡航からわずか2カ月後に詐欺拠点を抜け出し、日本政府に助けを求めたとされる。背景には、特殊詐欺の海外拠点に生じている「変化」があるとみられ、警視庁は実態解明を進めている。 トクリュウが関与しているとみられる特殊詐欺では、電話をかける「かけ子」などの拠点が海外に置かれるケースが増えている。フィリピンを拠点としていた「ルフィ」グループをはじめ、これまでにミャンマーやタイなどで、特殊詐欺に関わったとみられる日本人らが摘発された。 カンボジアの拠点を巡っては、警視庁が令和5年4月に男19人、同11月に埼玉県警が男25人を摘発。今年は、愛知県警が最大規模となる男女29人を現地から移送するなどしていた。 捜査関係者によると、以前は暴力団や準暴力団などを背景とする日本人が海外拠点の運営に関与していたとされるが、捜査関係者は「現在は中国系に牛耳られているとみられ、成果を出せないと追放されたり、疲れて逃げ帰ってきたりするケースもあるようだ」と分析。トクリュウと海外の犯罪組織との関係性も含め情勢を注視している。 トクリュウについて、警察庁と警視庁が10月に組織改編を行い、中核的人物の摘発に総力を挙げている。海外拠点も現地の捜査機関と情報共有を進めており、捜査幹部は「海外を拠点とする特殊詐欺は特に力を入れていく対象の一つ。今後も摘発を図っていく」としている。(海野慎介)

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