中国共産党が犯罪組織を利用して台湾で政治的影響力を拡大してきたことが明らかになった。台湾最大の暴力組織「竹聯幇」を中心に結成された政党に資金を提供し、統一戦線戦略の中核的な道具として活用することが中国共産党の戦略だったと、米紙ワシントン・ポスト(WP)が9月29日、報じた。 WPが名指しした政党は「中華統一促進党(CUPP)」だ。台湾内政部は今年1月、CUPPに対する政党解散審判を憲法裁判所に請求した。CUPPが国家安全法、反浸透法、刑法などに違反し、国家安全や社会の安定、選挙の公正性を深刻に脅かしたという疑いによるものだ。 反浸透法は、中国が台湾の選挙や政治過程に介入または影響を及ぼすことを防ぐ目的で2020年から施行されている法律だ。中国政府などの域外敵対勢力が政治資金提供などを通じて台湾の政界に影響力を行使することを禁じる内容が骨子となっている。台湾当局は、CUPPが2011年から最近までに約7400万台湾ドル(約3億6700万円)相当の政治資金を中国当局から受け取っていたとみている。 CUPPは、「一国二制度」形式による中国と台湾の統一を支持する政党だ。WPは「CUPPの党員たちは、(竹聯幇という)暴力組織員でありながら政党党員でもあるという立場を利用して、台湾国内で中国当局の利益を図るためのさまざまな活動を行ってきた」と伝えた。WPによると、CUPPは中国共産党から受け取った資金をもとに、中国政府を批判する台湾人を攻撃し、中国軍の力を誇示する内容を含む親中宣伝物を配布した疑いがもたれている。また、CUPP党員3人が台湾の現役将校を中国当局のスパイとして抱き込もうとした罪で、今年3月に有罪判決を受けた。 台湾の頼清徳総統は同月、「CUPPは中国のスパイ活動の通路だ」とし、「中国は台湾の自由・多様性・開放性を利用して暴力団や政党などを買収し、我々を内部から分裂・破壊・転覆させようとしてきた」と強く批判した。 WPは、CUPP党員の大半が竹聯幇の構成員であると伝えた。竹聯幇は「四海幇」「天道盟」と並ぶ台湾三大犯罪組織の一つで、主に麻薬密売やオンライン詐欺などで資金を稼いでいたという。2018年には、韓国に3700億ウォン(約397億円)相当の覚醒剤(メタンフェタミン、別名ヒロポン)が密輸された事件で、警察の調査の結果、この犯罪を主導したのが竹聯幇であることが明らかになった。 CUPPと竹聯幇を結びつける人物が、CUPPの総裁・張安楽だ。2005年にCUPPを創設した張は、1950年代の竹聯幇創立時のメンバーでもある。「白狼」という別称で知られる彼は、1980年代に米国で殺人・麻薬密売の容疑で逮捕され、10年間服役した。その後台湾に戻ったが、指名手配されたため、1996年に中国広東省深圳へ逃亡し、17年間ここに留まった。 この過程で中国共産党幹部と人脈を築き、「中国と台湾の統一」を掲げるCUPPを立ち上げた。2013年に台湾へ帰国してから本格的に政治活動を始めた張は、CUPPを3万人以上の党員を抱える政党へと成長させた。 台湾では、台湾海峡で急変事態が発生した場合、CUPPが中国の「武器」となることを懸念している。台湾政府は過去5年間にわたり、CUPPおよび竹聯幇が所有していた200丁の銃器を押収した。WPは「民間人による銃の使用が事実上存在しない台湾で、CUPPが大量の銃器を所持していた」とし「台湾当局は、中国が台湾へ侵攻した際、彼らが保有する銃器によって台湾社会を破壊し、中国当局にとって極めて効果的な協力者となる可能性があると見ている」と伝えた。 こうした指摘に対し、張はCUPP内部に竹聯幇の組織員がいることを認めつつも「党は台湾と中国の共同の幸福のために努力しており、それは平和的統一を通じてのみ達成できる」と述べ、暴力使用の可能性を否定した。また、中国当局との関与疑惑も否定した。中国の台湾担当機関である台湾事務弁公室は、CUPPに関するWPの取材に応じなかった。